天宇受賣命(アメノウズメノミコト)は、日本神話に登場する女神・天津神(あまつかみ)
天照大御神が天の岩戸隠れしたときに、岩戸の前でエロチックな踊りをして八百万の神を大笑いさせ天照大御神を誘い出した
日本最古の踊り子とされ、芸能の始祖神とされる
邇邇芸命の天孫降臨のときに、待ち伏せしていた猿田彦大神に声をかけて正体を名乗らせ、
後に、猿田彦大神から名前をもらい「猿女君(さるめのきみ)」と称され、一緒に伊勢の国で安住する
「古事記」によれば
<天の岩屋(あまのいわど)>
建速須佐之男命の乱暴に驚き困った天照大御神は、天の岩屋に閉じこもってしまい、高天原も葦原中国も真っ暗な闇になってしまう
八百万の神々が天の安河の川原に集まり、思金神(オモヒカネ)の案により、さまざまな儀式が行われた
天の安河の川上にある堅い岩や鉱山の鉄を採り、鍛冶の神の天津麻羅(アマツマラ)が伊斯許理度売命(イシコリドメ)に命じて
八咫鏡(やたのかがみ)を作らせた
玉祖命(タマノオヤ)に命じて、八尺の勾玉の五百箇のみすまるの珠(八尺瓊勾玉)を作らせた
天児屋命と太玉命(フトダマ)を呼んで、雄鹿の肩の骨を抜き取り、ははかの木を取って占いをさせた
賢木(さかき)を根ごと掘り起こし、枝に八尺瓊勾玉と八咫鏡と布帛をかけ、太玉命が御幣として奉げ持った
天児屋命が祝詞(のりと)を唱え、天手力雄神(アメノタヂカラオ)が岩戸の脇に隠れて立った
天宇受賣命が、岩戸の前で、槽(うけ)を伏せてその上に乗り、神憑りをして、胸をさらけ出し、裳の紐を陰部までおし下げて、
低く腰を落して足を踏み、笹葉を振って、エロチックに踊って、八百万の神を大笑いさせた
すると、天照大御神が扉を少し開けて様子を伺い、何事か尋ねる
天宇受賣命は、天照大御神に「あなたより尊い神が現れた」と言い、
天児屋命と太玉命が、天照大御神の前に鏡を差し出すと、その姿をよく見ようと岩戸をさらに開けた
そのとき、天手力雄神が、天照大御神の手を取って岩戸の外へ引きずり出した
すぐに太玉命が、注連縄を岩戸の入口に張って天の岩戸を封印する
太陽神がもとに戻り、高天原も葦原中国も明るさをとりもどした
建速須佐之男命は、髪と手足の爪を切って穢れを祓い、高天原から追放されてしまう
<天孫降臨>
国譲りを受けた天照大御神の孫の邇邇芸命(瓊瓊杵尊)が天降りしようとしたときに、天の八衢(やちまた)に立って
高天原(たかあまはら)から葦原中国(あしはらのなかのくに)までを照らす神がいた
天照大御神と高木神(高御産巣日神(タカミムスビ)は、天宇受売命に、「お前はか弱い女ではあるけれども、
敵対する神に対して面と向かっても顔負けしない神である」と、その神の元へ行って誰であるか尋ねるよう命じた
その神は、国津神の猿田彦大神と名乗り、天つ神の御子が天降りをされると聞いて先導をしようと迎えに来たという
天孫降臨には、5つの職業集団の長として5柱の五伴緒(いつとものお)がお供する
天児屋命・布刀玉命(フトダマ)・天宇受売命・伊斯許理度売命(イシコリドメ)・玉祖命(タマノオヤ)
また、三種の神器(八尺瓊勾玉・八咫鏡・天叢雲剣)を持った3柱が随行する
思金神(オモヒカネ)・手力男神(タヂカラオ)・天石門別神(アマノイワトワケ)
邇邇芸命らが無事に葦原中国に着くと、邇邇芸命は、天宇受売命に、「我々の先導を努めてくれた猿田彦大神は、
名前を聞き出したお前が送っていってあげなさい。そしてその神の名前を貰って自分の名前とし、一層我に仕えるように」と言った
これにより、女(をみな)を猿女君(さるめのきみ)と称することになる
猿田彦大神は、天宇受売神と故郷である伊勢国の五十鈴川の川上へ帰り、
その後、伊勢の地を本拠として国土の開拓を指導されたといわれる
<海鼠(なまこ)>
天宇受賣命が、大小の魚類を集めて「天つ神の御子に仕えまつるか」と尋ねたとき、
みんな「仕へまつります」と答えたが、海鼠(なまこ)だけが何も答えなかったため、
天宇受賣命は、ナマコに「この口だから答えられないのか」と、紐小刀(ひもかたな)で口を裂いたといわれる
そのため、今も海鼠の口は裂けている
これを以て、それぞれの治世で志摩の初物を供えられる時に、それを猿女君らに賜ることになる
<戸隠神社(長野市)>
天孫降臨の地の高千穂より天の岩戸が飛来したといわれる
天の岩戸神話に功績のあった神々が祀られており、火之御子社に天鈿女命が祀られている
<賣太神社(大和郡山市)>
天宇受賣命が稗田氏の祖とされ、稗田氏の氏神として祀られている
<佐瑠女神社(猿田彦神社境内)(伊勢市)>
<猿田彦神社(上京区)>
<大田神社>
<出世稲荷神社>
<幸神社>
<芸能神社(車折神社境内)>
<御辰稲荷神社>
<道祖神社>
<松原道祖神社>
<霊明神社 相殿>
「日本書紀」には、天宇受売神は、猿田彦大神に、胸乳を露わにし裳帯(もひも)を臍(へそ)の下に垂らしたと記されている
「古事記」「日本書紀」には、猿田彦大神と天宇受売神が結婚したことは記されていない
<ご利益>
芸能の始祖神、技芸全般の神、福の神、おかめとされる