亥(い)は、十二支の最後の第12番目、動物の猪(いのしし)とされる
「漢書」律暦志によると亥は、草木の生命力が種の中に閉じ込められた状態を表すといわれ
猪(いのしし)は、鯨偶蹄目イノシシ科の動物
豚(ブタ)は、イノシシが家畜化されたもの
猪(いのしし)は、昼行性・雑食性(土壌中の昆虫類や、植物の地下茎・ドングリなど)
猪(いのしし)は、子孫繁栄の象徴とされる
繁殖期は12月頃から約2か月間で、オスは、食欲を減退させ、発情した雌を捜して活発に徘徊する
メスの発情は3日間で、交尾を終えたオスは次の発情メスを捜して再び移動する
より体の大きな強いオスが、複数のメスを獲得していくため、強い種が残る自然の仕組みになっている
メスは、年1回、平均4から5頭ほどの子供を出産する
イノシシは多産のため、子授け祈願・子孫繁栄のご利益があるといわれる
<猪目文様>
猪目(いのめ)は、ハートを逆さにした模様
火伏や魔除けとして、神社などの建築物、仏具、刀剣の装飾に用いられる
<萩と猪>
花札では7月の絵柄に描かれる
<狛猪(霊猪像)>
「日本後紀」によると
和気清麻呂が、怪僧 道鏡が皇位を奪おうとした策略を暴いたことで恨みをかい、アキレス腱を切られ足の不自由な体で
大隅国(現在の鹿児島県)に流される途中、宇佐八幡宮の近くで、道鏡の手下に襲われそうになるが、
そこに300頭ものイノシシが現れて、和気清麻呂を取り巻き護り、宇佐八幡宮に案内をしたという
このとき、足腰を怪我をして動けなかった和気清麻呂が、イノシシに癒され、怪我が治癒したといわれる
このことから、イノシシは足腰を守る神さんとされる
<神さんの使い>
猪は、摩利支天の眷属(けんぞく)とされる
摩利支天は、陽炎(かげろう)から生まれた女神で、常に陽光(天日・月日)の先を進むといわれる
実体がない陽炎のように、捕らえることも傷つけることもできず、障害になる災難や厄いを除き進むといわれ武士からの信仰が厚かった
イノシシに乗っており、光のように突進するといわれる
<亥年の守り本尊>
阿弥陀如来
戌年と亥年生まれの守り本尊
無量寿如来・無量光如来とも称され、限りない生命を有し、無限の光を放つ仏とされる
その名を唱えれば極楽浄土に生まれるとされ、人びとを一切の不安から解き放つとされる
<下鴨神社>
末社 言社(ことしゃ)(重要文化財)
大国主命は、神徳により7つの名前を持ち、それぞれ神社が祀られている
干支(えと)(十二支)に対する守護神として、それぞれ生まれ年に参拝する干支詣(えともうで)が行われる
二言社(南社)祭神:大物主神(丑歳・亥歳守護神)
<放生院>
十二支守本尊像が祀られている
生まれ歳の干支(えと)による、東西南北と北東、北西、南東、南西の八方角に合わせた八体の守り本尊
戌・亥年生まれ:阿弥陀如来
<圓成寺>
京都御所 紫宸殿を中心に、十二支の方角に祀られた妙見大菩薩を参拝する洛陽十二支妙見めぐりの一つ
「妙見さん」と称される妙見大菩薩は、
北極星・北斗七星を神格化した菩薩であり、諸星の王として宇宙万物の運気を司どり支配する菩薩といわれる
圓成寺は、亥・北北西の方向にあり「鷹峯の岩戸妙見宮」と称される
<猿田彦神社>
本殿の前にある八方位を示す八角形の石の八方位文字盤
決まった方位の文字を順に手のひらを強く当てて祈願すると、願い事がかなうと言われる
仕事運:亥→卯→未(いうひつじ)の順
<護王神社>
祭神 和気清麻呂に従って、境内には、多くの狛猪、霊猪像が祀られている
イノシシ関連のコレクションもある
亥子祭
11月1日
平安時代に、旧暦10月亥の月の亥の日に行われていた宮中の御玄猪(おげんちょ)の儀式を再現した神事
宮司がついた亥の子餅を食べることによって、無病息災と子孫繁栄が祈願される
平安装束に身を纏った聖上(宮司)や祭員、奉仕女房が、拝殿の上で亥の子餅をつく儀式が行われる
出来上がった亥の子餅は、神前に献ぜられた後、提燈行列を伴い蛤御門を通って御所へ献納される
境内では、亥の子餅が参拝者に振舞われる
<禅居庵>
7匹の猪の上に座している、日本三大摩利支天とされる摩利支尊天像が祀られている
摩利支尊天堂の前には、4対の阿吽の狛猪がおかれている
<真珠庵>
方丈衣鉢の間の襖絵 紙本墨画 蜆子猪頭図(けんすちょとうず)4面(重要文化財)(長谷川等伯の筆)
<光源院>
本堂(方丈)の室中の間の14面の襖絵「十二支の図」14面
禅宗寺院では珍しい十二支が描かれている
本堂南側の枯山水庭園 十二支の庭
<愛宕神社>
火臼祭 11月亥の日
<相場格言>
「辰巳天井、午尻下がり、未辛抱、申亥騒ぐ。亥は笑い、亥固まる、子は繁栄、亥はつまずき、寅は千里を走り、卯は跳ねる」
亥年の相場は一段落するといわれる
<ぼたん肉>
猪のお肉のこと
京都では、「お肉」といえば、牛肉のこと
豚肉は「ブタ」、鶏肉は「かしわ」、馬肉は「さくら肉」と分けて称される
<亥の日の火入れ>
11月の最初の亥の日に、暖房機などの使い始めが行われる
茶界では、風炉(お茶を点てるときに使う釜)から炉に代えて炉開きをする
「亥」は、五行説で「水」にあたり、火を鎮めるとされており、「亥の日」に火入れを行うことで火事が起こりにくいといわれる
炉開きのときには、亥の子餅を食べられる