<平入形式>
京都の町家は、屋根の棟を通りに平行に構える形式となっている
(棟を通りに直角に構える様式は「妻入形式」と称する)
隣の家と接する屋根の妻側の端の「けらば」を互いに重ね合わせ、双方に雨が侵入しないように工夫されている
<真壁造>
京都の町家は、外壁に柱を見せる造りがされている
<土壁造>
京都には、火事を防ぐために土壁で外壁を覆う「土壁造」の町家は、明治時代になるまではほとんどなかった
<表屋造>
店を、通りに面して独立にして建てた造り
建物の間の中庭を「坪庭」と称する
<織屋造>
奥に機織機械を数台おく形式の西陣地区の京町家
<厨子二階(つしにかい)>
二階の天井が低く、虫籠窓がある建物
江戸時代から明治時代の様式
大名行列を見下ろさないように、2階の天井が低く抑えられていた
<総二階(そうにかい)>
二階の天井が一階と同じぐらいの建物
明治時代後期から昭和時代初期の様式
<平屋(ひらや)>
一階建ての町家
<仕舞屋(しもたや)>
住居専用の町家
店を「仕舞った」という意味が由来
<大塀造(だいべいづくり)>
仕舞屋の一種で、塀付きの屋敷
<揚見世(あげみせ)>
商家の門口の寄り付きに張り付いた上下げ式のバッタリ床几(ばったりしょうぎ)
朝に下ろして商品を並べ、閉店のときには折りたたんでしまう陳列棚
夜間は、格子面を守る防犯にもなっている
<網代天井(あじろてんじょう)>
うすく裂いた葦や檜などを編んだ天井
茶室や、数寄屋造の座敷などによく使われる
<一文字瓦(いちもんじがわら)>
京都の町家は、軒先の瓦の下端が、鋭い刃物で切り落としたように横一文字にそろっている
断面の厚さは三寸から三寸五分
町並みの統一感がある意匠となる
<犬走り(いぬばしり)>
軒下のこと
<犬矢来>
家屋を泥はねなどから守るため、格子窓や板塀の下部を竹で囲ったアーチ状の垣根
<鰻の寝床>
京都の町家は、間口が狭く、短冊形の宅地になっていること
<大戸(おおど)・くぐり戸>
通りに面した玄関口で、大きな物などを運ぶときには大戸を使い、
夜間や人の出入りには、大戸の内側一部に作られたくぐり戸が使われる
<おくどさん>
竈(かまど)のこと
おくどさんの上には、愛宕神社の「火廼要慎」のお札と、かまどの神さまである「布袋尊」が祀られる
<奥の間(おくのま)>
お客さんを通す座敷
庭に面し、床の間は季節によってしつらいが変えられる
<階段箪笥(かいだんだんす)>
階段の下を利用して箪笥にしたもの
<隠し階段(かくしかいだん)>
狭い京町家で、押し入れのスペースを使って造られている階段
急な傾斜で省スペースにもなっている
<ガス灯>
明治維新の頃に流行したもので、大正時代には少なくなっていった
<京格子(きょうごうし)>
「紅殻格子(べんがらごうし)」と称される千本格子
光を採り入れ、道ゆく人からは内側が見えにくく、家の中からは外の様子がよく見えるようにできている
店の様子を知りたい場合には、その前に立ち止まると中の様子がよく見えるようになっている
顔料の紅殻には防腐、防虫効果がある
「糸屋格子(いとやごうし)」は、西陣などでよく見られ、
格子の上部を切り止めることで光を多く取り入れ、着物の柄などがよく見えるような作りになっている
「茶屋格子(ちゃやごうし)」は、中が見えにくくなっている
「出格子(でごうし)」は出窓のような構造になっているもの
<潜戸(くぐりど)>
通りに面した玄関口で、夜間や人の出入りには、大戸の内側一部に作られたくぐり戸が使われる
<蔵(くら)>
食べ物や、商品、財宝を火事やネズミなどから守るための倉庫
壁は、漆喰で厚く塗り込まれており、真夏でも内部はひんやりしている
<けらば>
平入形式が基本の京町家の屋根の妻側の端の部分
隣の家と接する けらば を互いに重ね合わせ、双方に雨が侵入しないように工夫されている
<駒寄(こまよせ)>
軒下に設けられている、人馬の進入を防ぐための京格子を取り囲む柵
馬に乗って来たお客のための手綱を繋ぎ止めるものの名残ともいわれる
<下地窓(したじまど)>
壁の一部を塗り残したように下地をわざと見せた窓
茶室などで、かすかな明かりを取り入れるため使われた
<鍾馗さん>
小屋根(こやね)には、魔除けの鍾馗さんが祀られる(京都の風習)
<簾(すだれ)>
窓や京格子にかけられる日差し除けや、目隠しにもなる
風通しがよくし、京都の蒸し暑い夏を涼しげな風情を出す
<炭屋格子>
薪炭問屋の表は、独特の格子になっていた
幅三寸ほどの簀戸の板子、左右に開く目隠しのような格子、大戸との間に畳の横幅くらいの空間があった
<坪庭>
家屋の中ほどに設けられた小さな庭
風通しと採光の役割もある
小さいながらも、灯籠や庭石に趣向が凝らされる
<通り庭(とおりにわ)>
表通りから裏庭まで、店舗棟、玄関棟、住居棟を一直線につなぐ土間の部分
表から見世庭、玄関庭、走り庭などとも称される
<通り庇(とおりびさし)>
通りに向かって伸びた庇
バッタリ床几を出したり、雨宿りになったり、通りの公的な空間と、私的な空間をつなぐ半公共的な空間
<長暖簾(ながのれん)>
老舗の店先に、長々と垂れ下がった暖簾
本来は、風除けや、目隠しのために戸前に下げたもの
江戸時代初期
染織が発展して、屋号や、商標、取り扱う商品がデザイン化されて染められ、看板のように用いられるようになった
「京の三条室町は 聞いて極楽 居て見て地獄 お粥かくしの長暖簾」という京商人の囃子歌がある
<走り庭(はしりにわ)>
通り庭の奥のプライベートな部分
走り(流し)や、おくど(かまど)、井戸などがあり、吹き抜けで梁が見える
<バッタリ床几(ばったりしょうぎ)>
商家の門口の寄り付きに張り付いた上下げ式の揚見世(あげみせ)
朝に下ろして商品を並べ、閉店のときには折りたたんでしまう陳列棚
夜間は、格子面を守る防犯にもなっている
<張り出し>
室町時代の商家に作られた「揚が棚」の一つ
床几のような棚が門口から通りにせり出して障子がめぐらされる
<見せの間(みせのま)>
通りに面した一番目の部屋のことで、商売のための部屋に使われる「店の間」
<虫籠窓>
2階の土塗り壁の格子状の通風や採光のための窓
明治時代以前は、「厨子二階」と称される、低い2階となっており、延焼防止のため大半を土で塗り込められていた
姿形が「むしかご」に似ていることから称されるようになったといわれている
<嫁隠し>
表玄関から裏まで続く細い通路(通り庭、走り庭)の中間付近にある半間ほどの板や衝立
嫁隠しから奥は台所などの生活空間となる
親しい人でも、家の人の許可が出るまでは、それより奥には入ってはいけない暗黙の習慣がある
2000年(皇紀2660)平成12年5月9日
京都市により、京都の歴史・文化の象徴である京町家の保全・再生を促進するための支援策として策定される
<ひと〜くらしの文化の継承・発展>
<たてもの〜空間の文化の継承・発展>
<まち〜まちづくりの文化の継承・発展>
<川崎家住宅>
祇園祭の山鉾が並ぶ新町通沿いにある
<杉本家>
「奈良屋」という呉服屋で、町家としては、最大級の建物
<長江家住宅>
典型的な職住一体の京都呉服商家
<長谷川家住宅>
江戸時代の農家住宅
<二條陣屋(小川家住宅)>
江戸時代初期に、小川家の住宅として建てられた京町家
京都に屋敷を持たない諸大名の上洛中の陣屋、奉行所の公事宿などとしても利用された
<しつらえ替え・建具替え>
夏になる前・冬になる前に、建具や家全体を装いを変えること
京都盆地にあり、空調を用いず、夏は蒸し暑く、冬は底冷えする対策
基本的に、暖房で温められる冬ではなく、蒸し暑い夏を基準にして作られている
夏になる前には
建具を、蔵から出した夏物に入れ替える
障子ふすまを取り払って、すだれを吊し、葦戸(よしど)を立てる
べんがら格子の内側のガラス戸を開ける
座敷と庭の境には、生絹(すずし)(繭から採れたままの透明な絹で織った布)がかけられる
たたみには、ひんやりする網代(あじろ)・藤筵(とうむしろ)を敷く
朝、太陽が当たる前に、玄関に打ち水をする
その効果で、表から裏庭まで、通り庭に風が通り抜ける
冬になる前には、
建具を、蔵から出した冬物に入れ替える
すだれや葦戸・生絹を外して、障子ふすまを入れる
べんがら格子の内側にはガラス戸などで閉める
たたみには、手触りの温かい段通(だんつう)を敷く