翔んで京都(とんできょうと)

「翔んで京都」は、東映の映画にもなった摩夜峰央の漫画作品「翔んで埼玉」を、京都を題材にもじったもの

京都人には、聖徳太子の「和を以て貴しとなす」の教えの気質が引き継がれ、
相手を気遣いながらも、正すべきことをしっかり伝え合って、
絶えず、地方からの よそさん が入ってくる中で、都の文化を継承してきたといわれる

【初級】

 <「一見さん お断り」>

  京都の料亭では、初めてのお客さんは断られてしまい敷居が高いといわれるが、
  敷居は、その人のレベルからの高さといわれ、その人のレベルが高ければ、何の敷居もない

  料亭では、趣味趣向が分からない人を十分におもてなしするのは難しく、粗相をしてしまわないようにとお断りをされている
  特に最近では、SNSで酷評をする人も多く、趣向が分からまま、合わないサービスを提供して悪い評判になることも避けている

 (お店の人の本音)
  「初めてのお客さんやったら、どう接していいかも分からへんさかい、お断りさせてもらいましょ」

 (紹介をしてもらって、初めて予約をするときなどは)
  アレルギーや嫌いな食材などや、居住地、京都への目的などをきちんと伝えて、
  「好き嫌いなく何でも大丈夫です」ではなく「旬な魚やお肉が大好きです」と一つでもポイントを伝えるとよい


 <「ぶぶづけでもいかがですか?」>

 (世間話)
  京都の料亭や知人宅を訪問しているときに、ぶぶづけを勧められたら「早く帰れ」ということだといわれるが、そうでもない

  「ぶぶづけ」とは、お茶漬けのこと
  そもそも、京都では、お客さんを招くときには、自炊の家庭料理ではなく、仕出屋さんを頼むのが普通であり、
  料亭でも、お客さんに合わせた仕入れしかしないので、
  楽しくて追加でおもてなしをしたくても、お茶漬けぐらいしか用意できない状況になる
  そこで、楽しい余韻をもって、気持ちよく帰ってもらうための気遣いの会話になる

 (京都人の本音)
  「楽しい時間やったわぁ、もう少しお話したいけど、何も用意できひんさかい、どないしよ」

 (正しい返答)
  「すっかりご馳走になりました、もう手間かけんといて」と帰り支度を始める

 (間違った対応)
  「そうですかぁ、せっかくやから頂きます」と返答してしまうと、
  「ほな、これからご飯を炊かなあかんから1時間ぐらい待っといてくださいね」と言われることになりかねない


 <「もうこんな時間になって大丈夫ですか?」>

 (エピソード)
  出張で京都に来たサラリーマンが、歓迎の食事会・飲み会をしてもらっていて、いい時間になってきたときに
  京都の人から「もうこんな時間になって大丈夫ですか?」と尋ねられて、
  「ホテルですのでまだ大丈夫ですよ」と返事したところ、
  京都の人に笑顔で「そうですかぁ」と言われ、歓迎ムードがなくなったのを感じたという

 (京都人の本音)
  「なんだよ、もういい加減遅いから、お開きにしようと思って声をかけたのに、察しろよ」

 (正しい返答)
  「ホテルなので帰りは大丈夫なのですが、もうこんな時間になってしまって、ありがとうございました」
  と返答して、一旦終わりにして、その後は、都合により誘ってもらいやすようにする


 <「では、もう一軒いきますか?」>

 (エピソード)
  前例の会話で「ホテルですのでまだ大丈夫ですよ」と返事したのに続いて、
  京都の人から「では、もう一軒いきますか?」と言われたので、「はい是非」と返事すると
  「こんな時間で、いいとこ開いているか分からへんなぁ、聞いてくるからちょっと待ってて」と言われた

 (京都人の本音)
  「なんだよ、ダメ押ししたのに、ほんとに察しないヤツだなぁ」

 (正しい対応)
  「もう遅いので、いいお店は終わっているんじゃないですか」とか「また次の機会でもいいですよ」と、
  遠慮する雰囲気を作る
  本当に誘いたいのなら、三顧の礼のように、もう一度誘ってこられる


 <「元気なお子さんですね」>

 (エピソード)
  子連れで食事に入ったお店で、子供が歩き回って遊んでいるのを見た隣のお客さんが、
  「元気なお子さんですね」と声をかけてきたので、
  「おかげさまで元気に育ってくれて何よりです」と返事したところ、
  京都の人からは呆れ顔をされてしまった

 (京都人の本音)
  「子供が歩き回って騒がしいんですけど、ちゃんとしつけをしなさい」

 (正しい対応)
  「騒がしくして申し訳ございません」と謝り、すぐに子供をたしなめる


 <「毎日ピアノの練習されて、お上手にならはったね」>

 (エピソード)
  地方から引っ越してきたばかりの小学生の子供を持つお母さんが、
  近所の方から「毎日ピアノの練習されて、お上手にならはったね」と言われた
  お母さんは「いえいえ、そんなことないですよ、ありがとうございます」と返事したところ
  近所の人からは呆れ顔をされてしまった

 (近所の人の本音)
  「毎日、下手なピアノを聞かされて、うるさいんですけど」

 (正しい対応)
  「うるさくして申し訳ございません」と謝り、今後の許しを請う


 <「きれいにしてはりますねぇ」>

 (エピソード)
  地方から京都に引っ越してきた夫婦が、玄関先の掃き掃除などもしないでいると、
  家の前で町内の人に「いつも、きれいにしてはりますねぇ」と声をかけられて、
  どういうことなのか困惑してしまったという

 (町内の人の本音)
  「玄関先がキタナイんですよ、自分の玄関先ぐらい、きれいに掃除しなさい」

 (正しい対応)
  黙って掃除をするしかない

 (間違った対応)
  「すみません、そんなしきたりがあるとは知らなかったもので」と言い訳すると、
  「しきたりやない、人として当たり前のことも知らない人なのか」と呆れられる

【中級】

 <「おこしやす」と「おいでやす」>

  伝統的な料亭やお店では、「おこしやす」と「おいでやす」を使い分けられている
  「おこしやす」は歓迎のときに、「おいでやす」は儀礼的に使われる
  特に、伝統的な料亭や、伝統工芸店などでは、あきらさまに「おいでやす」と言われて敬遠されることも多い
  お金を持っていて買うと言っても、物の良さを理解していなさそうな人には売ってくれないこともある

 (お店の人の本音)
  「おいでやす」=「うちの店には、ふさわしくないような人だけど、挨拶はしとこ」

 (正しい対応)
  「おいでやす」と言われたら、表の棚のものだけ見て退散する

  歓迎するお客さんには「ようこそ、おいでやすぅ」ともてなされる

  安易に「おいでやす」と挨拶したり看板を出しているお店は、京都人からは、敬遠されている


 <「よそさんやさかい、しゃーないなぁ」>

 (エピソード)
   料亭で女将さんと上記エピソードの「おこしやすとおいでやす」の話になったとき
  「新京極には「おいでやす」の看板を出したお店が多いですよねぇ」と言うと
  女将さんは「よそさんのお店ばっかりやさかい、しゃーないなぁ
  修学旅行生や観光客には、よろしいんとちゃいますか
  私は、そんなところでは買わへんけど」と話していた

 (京都人の本音)
  「お店の人も、お客も、京都の文化を知らないもん同士がやりとりしているから仕方がない
  「枯れ木も山の賑わい」と言うし
  どうせ、そんなお店はすぐに変わるだろうから

 1300年以上の都には、絶えず地方から人がやってきては入れ替わってきている
 京都人は、地方の人を「よそさん」と称して、うまく付き合って、都の文化を守って継承してきている


 <「とても古いお店のお菓子なんですね」>

 (エピソード)
  地方の人が、京都の知人宅への訪問のお土産に、地元の銘菓を持って行くのは良かったが、
  「明治創業のお店のお菓子なんですよ」と言ってしまったところ、
  「まぁとても古いお店のお菓子なんですね」といやみっぽく言われた

 (京都人の本音)
  「そんなん自慢せんかて、明治なんて、まだ新しいほうやん」

  京都には、創業100年以上のお店は多くさんあり、江戸時代創業ぐらいにならないと老舗と思われないといわれる


 <「おもたせに合うお茶が出せるやろうかぁ」>

 (エピソード)
  東京の人が、京都の知人宅への訪問のお土産に、東京駅で、東京ばな奈の詰め合わせを持って行ったところ
  「わざわざ買ってきてくれておおきに、おもたせに合うお茶が出せるやろうかぁ」と言われた

 (京都人の本音)
  「観光旅行でのお土産やないのに、おつかいものというのを知らんのやろうか」

  京都では、お茶席やおつかいもので用いられる上菓子と、普段のお菓子とは分けられている
  東京ばな奈は、バリュエーションも豊富で、友人や子供へのお土産にはとても喜ばれる
  京都の銘菓「八ツ橋」や「おたべ」は、観光土産や友人などのお土産には人気だが、決して「おつかいもの」にはしない

【上級】

 <「まぁ珍しいお料理ですこと」>

 (エピソード)
  春先の時期に、東京の料理人が、京都の老舗料亭に修行に入るために、採用試験を兼ねて実際に料理の腕前を披露された
  料理人が出した料理は「筍のかぼちゃスープ」「ブリの照焼きに焼きナス添え」など、
  どれもシンプルだが、味は絶品だったが、
  女将さんに「まぁ珍しいお料理ですこと、よう勉強されてはるねぇ」と言われて不採用になった


 (女将さんの本音)
  「こんな季節感がごちゃまぜのお料理なんて、お客さんにようだされへんわ、もっと勉強しておいで」

  タケノコは春が旬、かぼちゃは冬か夏野菜、ブリは冬の魚、ナスは夏野菜
  京都では、お料理にも季節感が大事にされ、決して、ごちゃまぜにした季節感のない料理は出されないといわれる


 <「まぁ、冬に生まれたのに可愛い名前をつけてもらわはって」>

 (エピソード)
  5月の連休に、京都の料亭で食事を楽しんでいた若い女性たち、女将さんから名前を尋ねられ、
  一人の女性が「葵です」と答えたところ、「まぁ、ちょうど誕生日なんですね」と言われて、
  女性が「いいえ12月生まれなんですよ」と答えると、
  女将さんから「まぁ、冬に生まれたのに可愛い名前をつけてもらわはって」と言われた

 (女将さんの本音)
  「何で5月生まれと違うのに「葵」ってつけたんやろ、親の顔を見てみたいわ」

  京都では、名前やお料理など、生活の中で季節感が大事にされている
  「葵」は、平安時代から続く葵祭が行われる5月1日から15日に生まれた女の子にしかつけないといわれる

【京都人を呆れさせる言葉】

 <「京都人はイケズだから」>

  「イケズ」とは、京ことばで「意地の悪い人」という意味があり、京都人の性格としてよくいわれている

   (京都人の本音)
  「また言うたはるは、そう簡単には京都人の奥ゆかしさが理解できひんのやから、かわいそうに」


 <「大文字焼」>

  毎年8月16日に行われる、祖先の精霊をあの世に送り返す供養のための五山の送り火
    「大文字焼」と言う観光客も多いが、
    京都人は、織田信長の京や寺院の焼払いを連想するので、「大文字焼」と聞くと、あまりいい感じをしない
 
   (京都人の本音)
    「五山の送り火は、大文字だけでなくて「法」や「妙」「鳥居さん」もあるのに知らへんのやぁ、もっと勉強して観光においで」
 
 
 <「お肉って何のお肉ですか?」>

 (エピソード)
  八坂さんの近くの食事処で、観光客らしいおばさんがメニューを見て悩んでいて、わざわざ店員さんを呼んで
  「肉うどんの肉って、何のお肉ですか?」と尋ねた
  店員さんは、怪訝そうな顔をして「豚肉ならブタ、鶏肉ならかしわと書きますよ」と返答して戻って行った

 (京都人の本音)
  「お肉って言ったら牛に決まってるやろ、お肉を食べたことないんとちがうか」

  京都では、「お肉」といえば、牛肉のこと
  豚肉は「ブタ」、鶏肉は「かしわ」、馬肉は「さくら肉」、猪肉は「ぼたん肉」と分けて称される


 <「琵琶湖の水を止めるで!」>

  琵琶湖からの疏水が、宇治川の下流に流れ込んできて、大阪に流れていく
  滋賀県の人は、京都人や大阪人にバカにされると、よく「琵琶湖の水を止めるで!」と反撃する

 (京都人の本音)
  「またアホなこと言ったはる、止めれるもんなら止めてみ」

 (現状)
  琵琶湖疏水は、近江からの物資を京都に運ぶ水運や、日本初の水力発電所に使われたもので、
  生活用水としては、京都人にはあまり影響がないといわれる

  かつ、琵琶湖疏水は、京都市が運営管理をしていて、流れを止める権利は滋賀にはないとされる


 <「江戸時代からのお祭なんですよ」>

 (エピソード)
  京都出身の友人と東京神田祭のTVを見ていて、
  レポータが「1600年頃から400年以上も続くお祭なんです」と言っていたのを聞いて、
  京都の友人が、「へぇ日本三大祭なのに江戸時代のお祭なんだぁ」と言っていた

 (京都人の本音)
  「日本三大祭というぐらいなのに始まって400年って、まだ、最近始まったばかりのお祭なのに、そんなんで自慢するなよぁ」

  京都には、平安時代からの由緒があるお祭がいくつもある
  日本三大祭は、京都の祇園祭、東京の神田祭と、大阪の天神祭か青森のねぶた祭などとされている


 <「日本の首都は東京なのに」>

  京都の人は「明治になって、天皇さんが東京に出かけられて、まだ戻ってこられていないだけ」と思っているといわれる

 (京都人の本音)
  「また地方の人がひがんだはるは」

 (現状)
  法的には、794年(皇紀1454年)延暦13年10月22日に、桓武天皇平安京に遷都する詔が出されてから、
 東京に遷都する詔も法令も何もなく、東京が首都である法的根拠は無いとされている
  現在も、天皇さんの所在を示す高御座は、京都御所紫宸殿に置かれている



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