琵琶湖疏水(びわこそすい)(Drainage of Biwako) 京都通メンバ
所在地:京都市左京区・東山区・山科区   名所地図情報名所

推進者:北垣国道(きたがきくにみち)(第3代京都府知事)、高木文平など

疏水工事責任者:田邊朔郎

測量主任:島田道生

 琵琶湖疏水(びわこそすい)とは、琵琶湖の湖水を、灌漑用水(かんがいようすい)や、物資の運搬・発電などに活用するため、
大津市三保ヶ崎の取水点から蹴上まで開削(かいさく)された水路


 首都機能の東京移転後の京都の復興策として、「百年の計」で実施された一大土木事業

 蹴上において、日本最初の営業用の水力発電も行われ、日本最初の路面電車の運行にも貢献する

 琵琶湖疏水の関連施設12ヶ所が、国の史跡に指定されている

【琵琶湖疏水の歴史・経緯】





【関連人物】

 疏水工事の責任者 : 田邊朔郎
 工部大学(現在の東京大学)出身の技術者

 当時の京都府知事 : 第3代 北垣国道(きたがきくにみち)

 田邊朔郎の妻 静子は、北垣国道の令嬢

 田邊夫妻のお墓が、蹴上近くの大日山墓地におかれている

【経路】

 <第1疏水>
 第1疏水は、山科北部を流れ、「山科疏水」と称される

 取水口:大津市三保ヶ崎
 長等山を、第1トンネル(長等山トンネル)で抜け、滋賀県から京都府に入る
 山科盆地の北辺に沿って西に、諸羽トンネル、第2トンネル、第3トンネルを抜け、蹴上に出て第2疏水と合流する

 <第2疏水>
 水道水源としての利用にあたり汚染を防ぐため、ほぼ全線がトンネルと埋立水路(暗渠)で、蹴上で第1疏水と合流する

 取水口:大津市三保ヶ崎
 途中には、琵琶湖総合開発計画による水位低下に対処して第2疏水連絡トンネルも建設される
 蹴上に出て第2疏水と合流する

 <蹴上の合流点>
 第1疏水と第2疏水が合流する合流トンネルがある
 合流後は、蹴上船溜りとなっている
 船は、蹴上船溜りから南禅寺船溜までの間、インクラインに載せられて運行されていた
 蹴上浄水場・新山科浄水場・山ノ内浄水場・蹴上発電所の取水がここで行われる
 本線と分線に分岐する

 <本線>
 第1疏水と第2疏水が合流して蹴上船溜りの後、本線と分線に分岐する
 本線は、鴨東運河(おうとううんが)・鴨川運河となって鴨川沿いを南下、伏見で濠川とつながり宇治川に放水される

 蹴上船溜りから蹴上発電所を経由して南禅寺船溜りに流れる
 白川と合流し、しばらく一緒に流れ、分流した後、夷川船溜りに流れる
 夷川ダム・夷川発電所を経て鴨川東岸を、二条通・仁王門制水門・御池通三条通と流れる
 三条通から塩小路までは川端通下を暗渠で流れる
 塩小路から開渠となり、鴨川を離れて、東高瀬川・七瀬川を超えて墨染のダムに流れる
 墨染ダムから、伏見インクライン(国道24号の拡幅用地に転用され現存せず)を経て伏見区堀詰で旧伏見城外堀の濠川につながる
 濠川から、旧伏見港、三栖閘門を経て宇治川に放水される

 <疏水分線>
 蹴上船溜りの後、本線と分線に分岐し、分線は北に向かう

 第4トンネルを経て、
 南禅寺の境内を水路閣でまたぎ第5トンネル・第6トンネルの流れと、南禅寺トンネルを流れの2つの流れがある
 熊野若王子神社の手前で合流して開講し、銀閣寺付近まで哲学の道に沿って流れる
 今出川通と並走し、志賀越道から北進し、北白川疏水通と並走したのち高野川を渡る
 松ヶ崎浄水場の南縁から南西へ方向を変え下鴨中通で開渠区間が終わり、
 小川頭(現在の紫明通小川)を終点とし、堀川に合流する

【トンネル】

 第1疏水の大津市三保ヶ崎と蹴上の間には5本のトンネルが掘削される

 <第1トンネル(長等山トンネル)> 2438m
 第1トンネル掘削に伴う長等山(ながらやま)の竪穴工事は、全体の工事の中でも屈指の難工事だったといわれる
 竪抗は、直径約5.5m

 <諸羽トンネル> 520m
 <第2トンネル> 124m
 <第3トンネル> 850m

 <扁額>
 6ヶ所の各トンネルの出入口には、石造洞門が建てられ、政府の有力者たちの篆刻(てんこく)された石額が掲げられている
 篆刻の文字は、水が入り込む大津側は、陰刻(いんこく)、水の出て行く京都側は、陽刻(ようこく)になっている
 各トンネルの洞門のデザインも、向かい合うものが同一の構造になっている
 第1トンネル大津側には、伊藤博文筆の「気象萬千(きしょうばんせん)」
 京都側には、山縣有朋筆の「廓其有容(かくとしてそれかたちあり)」
 第2トンネル西口には、西郷従道の「随山到水源(やまにしたがいて、すいげんにいたる)」
 第3トンネル西口には、三条実美が揮毫した「美哉山河」の扁額が掲げられている

 <合流トンネル> 87m
 蹴上の手前で、第1疏水と第2疏水が合流する

 疏水分線
 <第4トンネル> 136m
 <南禅寺トンネル> 1000m
 <第5トンネル> 102m
 <第6トンネル> 182m



インクライン

 琵琶湖疏水は、鴨川と琵琶湖との間の水運にも用いられ、物資を載せる疏水船で運ばれる
 蹴上付近では勾配が急すぎるため、インクラインと呼ばれる線路が敷かれ
 疏水船は、蹴上船溜でインクラインの線路の上の台車に載せられて移動され、南禅寺船溜で降ろされる

 現在は、インクラインは廃止され、残された一部の線路の周囲は桜の名所

【鉄筋コンクリート橋】

 琵琶湖第一疏水、山科区日ノ岡にある第3トンネル東の第11号橋

 日本最初の鉄筋コンクリート橋(国の史跡)で、石碑「本邦最初鉄筋混凝土橋」が立てられている

 1903年(皇紀2563)明治36年の建造

 鉄筋は、専用の材料がなかったため、疏水工事で使ったトロッコのレールが代用されている

水路閣

 水路閣は、南禅寺境内にある、琵琶湖疏水の支流
 京都北部地域の灌漑用水のために引かれた水路

 1888年(皇紀2548)明治21年に建設される
 南禅寺の境内を水路閣でまたぎ松ヶ崎浄水場へと流れていく

 設計は、田邊朔郎
 ローマ帝国のローマ水道が参考にされる
 半円アーチ式煉瓦造り
 全長約93m、高さ約13m、幅約4m


琵琶湖疏水記念館

 1989年(皇紀2649)平成元年
 蹴上に開館する
 インクラインの模型や、疏水建設当時の図面、工事に使用した道具などが展示されている


【山ノ内浄水場取水口】

 山ノ内浄水場取水口は、蹴上浄水場の東、安養寺日向大神宮への登り口にある

 山ノ内浄水場は、右京区にあり、京都市の蹴上浄水場・松ヶ崎浄水場・新山科浄水場の4つの浄水場の一つ

 第2琵琶湖疏水から取水した原水を、取水池の自動除塵機でゴミや藻類などを取り除き、
導水管で、インクライン・仁王門通・冷泉通・鴨川を横断して・御池通を通り、
約8km先の山ノ内浄水場へ導水されている

 山ノ内浄水場では、薬品凝集沈殿・急速砂ろ過・塩素消毒されて、
西京区・右京区・中京区・南区に給水している

 <山ノ内浄水場導水管>
 ダクタイル鋳鉄管
 直管や異形管を組み合わせ、ゴム輪・押輪・ボルト・ナットなどで接続される

 直管は、直径1.65m、長さ4m、重さ約5トンある

 1日約26万4千m3の原水を送る能力がある


【その他】

 <哲学の道
 若王子橋から北側、銀閣寺橋までの疏水沿いの堤が、遊歩道となっており「哲学の道」と称される
 春は桜の名所、夏は蛍の名所にもなっている

 <九条山浄水場ポンプ室
 琵琶湖疏水の水を防火用水として京都御所へ送るために建設された建物

 <蹴上浄水場
 京都市三大事業上水道整備事業の一環で建設された日本最初の急速ろ過式浄水場

 <蹴上発電所
 琵琶湖疏水の水を利用して水力発電を行った日本最初の商用発電所

 <琵琶湖疏水工事殉難者碑
 蹴上疏水公園にある慰霊碑
 琵琶湖疏水を主導した田邊朔郎により私費で建立されたもの

 <琵琶湖疏水工事殉職者碑
 蹴上疏水公園にある慰霊碑
 琵琶湖疏水を管掌していた京都市電気局により建立される

 <平安神宮
 小川治兵衛が作庭した神苑の池に琵琶湖疏水からの水が引かれている

 <無鄰菴
 小川治兵衛が作庭した庭園の池に琵琶湖疏水からの水が引かれている

 <師団橋
 伏見の第二軍道が琵琶湖疏水をまたぐ橋
 橋桁には、陸軍のシンボルマークである五芒星(ごぼうせい)が残されている

 <近代京都文学 京都ゆかりの著書
 「卯の花くたし、鹿ヶ谷、琵琶湖疏水」 田宮虎彦


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