田辺朔郎紀功碑(たなべさくろうきこうひ)

所在地:京都市左京区粟田口大日山町   名所地図情報名所

 田辺朔郎紀功碑(たなべさくろうきこうひ)は、蹴上疏水公園にある、田邊朔郎の還暦を記念して功績を讃えた記念碑

 田邊朔郎は、琵琶湖疏水工事を推進し、その後も京都市・京都府の土木事業に携わった

 この碑の北隣に、田邊朔郎の銅像が建立されている

【工学博士田辺朔郎君紀功碑】

 1923年(皇紀2583)大正12年7月19日
 賀茂川高野川の合流地点の出町剣先に、還暦を記念して功績を讃えた記念碑が建てられ除幕が行われた

 1941年(皇紀2601)昭和16年
 現在の地に移された

 1982年(皇紀2642)昭和57年
 この碑の北隣に、田邊朔郎の銅像が建立された


 建立者:京都府
 碑文:山本竟山書

 高さ約360cm × 幅155cm x 奥行29cm

 礎石の中に石の唐櫃が設けられていて、琵琶湖疏水工事や、その他の資料を銅管内に封入して収められている


 <碑文 西側>
 工学博士田辺朔郎君紀功碑

 <碑文 東側>
 従三位勲二等工学博士田辺朔郎君紀功碑ノ記
 琵琶湖ノ水ヲ引キテ水利ヲ京都ニ興サントスルハ百餘年来屡識者ノ唱へシ所ナレドモ能ク起チテ之ニ当ル者ナカリキ明治二年
 車駕東幸シ一千年 帝都ノ地日ニ衰弊セントス事 天聴ニ達シ畏クモ 内帑ノ金ヲ賜ヒテ産業振興ノ資ヲ佐ケラル京都府知事
 北垣国道君 聖旨ニ感激シ琵琶湖疏水工事ヲ断行シ府民ヲシテ永ク 皇沢ニ浴セシメント欲ス時ニ田辺朔郎君工部大学生タリ夙ニ
 琵琶湖疏水ノ京都ニ利アルヲ念ヒ其ノ地ヲ踏査シテ審ニ之ヲ論ゼリ大学校長大鳥圭介君素ヨリ君ガ才ノ用フベキヲ知リ之ヲ知事
 ニ薦ム知事君ノ設計ヲ聴キテ大ニ喜ビ十六年君ガ二十三歳ニシテ大学ヲ卒業スルニ及ビ此ノ大工事ヲ挙ゲテ君ニ嘱セリ当時我ガ
 国土木ノ術未進マズ工事ノ稍大ナル者ハ概之ヲ外人ニ託スルヲ常トセシカバ君ノ才ヲ知ラズシテ其ノ前途ヲ危ミ此ノ挙ヲ難ズル
 者尠カラズサレド知事ハ群議ヲ却ケ君ヲ信ジテ疑ハズ君亦慨然トシテ之ニ任ゼリ乃チ水路ヲ幹枝二線ニ分チ湖口三保崎ヨリ藤尾
 山科蹴上ヲ経テ夷川ニ至リ堀川ニ合スル者ヲ幹線トシ専之ヲ舟運ニ便シ蹴上ヨリ若王子白川ヲ経テ堀川ニ合スル者ヲ枝線トシ之
 ヲ潅漑及工業二供スル計画ヲ定ム斯クテ十八年六月三日ヲ以テ工ヲ起スヤ君日夜心血ヲ傾注シテ之二当リ要スル所ノ材料及機械
 ノ類或ハ遠ク外国二求メ或ハ自考案製作シ又部下ヲ教習指導シテ其ノ技ニ熟セシムル等百方画策孜孜トシテ倦マズ工程愈進ミテ
 苦慮益加ル就中長等山隧道ハ長サ一千三百四十間国中ニ比ナク蹴上ヨリ南禅寺前ニ至ル傾斜鉄道ハ長サ三百二十間世界未曽有ト
 ス又南禅寺前ヨリ鴨川ニ至ル間ニハ閘門ヲ設ケ落差ヲ調節シテ舟運ニ便セリ此ノ工未半ナラザルニ米国ニ於テ始メテ水力発電所
 ヲ設ケタルヲ聞キ二十一年君米国ニ赴キテ之ヲ調査シ帰リテ発電所ヲ蹴上ニ創設ス是我ガ国ニ於ケル水力発電装置ノ嚆矢ニシテ
 世界最大ト称セラル経営ノ苦心思フベシ二十三年四月功竣ル起工以来実ニ一千七百七十二日ヲ閲セリ之ヲ第一疏水トス同月九日
 竣功式ヲ挙行ス 天皇 皇后親臨シ 優詔ヲ賜ヒテ偉功ヲ褒セラル其ノ後君ハ帝国大学教授ニ任ゼラレテ東京ニ赴キ工学博士
 ヲ授ケラレ次イデ北海道庁鉄道部長ヨリ京都帝国大学教授ニ転ジ現ニ其ノ任ニ在リ夷川ヨリ深草ヲ経テ伏見ニ至ル運河ハ第一疏
 水ノ延長工事ニシテ君ガ其ノ設計及監督ノ大綱ニ参与シタルハ東京在任中ノ事ニ属ス四十一年京都市再君ニ嘱シテ第二疏水及上
 水道街路改修ノ三大工事ヲ行フ乃チ第一疏水ニ沿ヒテ隧道ヲ設ケ水ヲ蹴上ニ会セシメ之ニ依リテ発電力ヲ増大シ改修街路上ニ電
 車ヲ運転シ上水道ノ設備ヲ完成シ且蹴上以下ノ既設水路ヲ拡張シ大ニ舟運ノ便ヲ加フルニ至レリ顧フニ琵琶湖疏水ハ我ガ国空前
 ノ大工事ニシテ其ノ施設ハ東西諸国ニ率先セリ学識該博徳望衆ヲ率ヰ至誠堅忍経営宜シキヲ得ルコト君ガ如クナルニ非ザルヨリ
 ハ焉ゾ此ノ功ヲ収メン英米諸国之ヲ聞キ君ニ功牌ヲ贈リテ其ノ功ヲ称セリ君ガ京都府ニ於ケル功績ハ之ニ止ラズ京都ヨリ宮津ニ
 至ル道路ヲ改修シ京都舞鶴間ノ鉄道線路ヲ選定セルガ如キ皆其ノ宜シキヲ得ザルハナシ嗚呼偉ナルカナ今ヤ京都ノ殷盛ハ昔日ニ
 陵駕シ疏水ノ偉績ハ永ク万人ノ頼ル所タリ疏水ノ鴨川ニ注グ処橋ヲ架シテ田邊橋ト曰フハ未君ノ名ヲ著スニ足ラズ大正十年君寿
 還暦ニ当ル乃チ碑ヲ建テ事ヲ記シテ其ノ功ヲ百世ニ伝フ実ニ我ガ府民ノ志ナリ
 大正十二年二月
 京都府知事正四位勲三等池松時和
 京都芳村茂右衛門刻

 <碑文 南側>
 昭和十六年八月正三位勲一等工学博士
 田辺朔郎君ノ紀功碑ヲ下鴨ヨリ蹴上ニ移築ス

【アクセス】

 地下鉄 東西線 蹴上駅 徒歩約5分

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