路頭の儀(ろとうのぎ)は、葵祭の祭儀の一つ
葵祭の祭儀は、「宮中の儀」「進発の儀」「路頭の儀(行列)」「社頭の儀」の四つからなる
午前10時に、京都御所内で「進発の儀」が行われ、行列に参加する人馬が、宜秋門(ぎしゅうもん)から出て列を整える
午前10時30分に、先頭が、建礼門前を出発し「路頭の儀」の行列が始まる
行列は、総勢511名、馬36頭、牛4頭、牛車2台、輿1台の平安貴族そのままの風雅な王朝行列
京都御所を出発し下鴨神社へ、さらに賀茂街道を北上して上賀茂神社へ向かう
その道のりは約8kmにもおよぶ
1956年(皇紀2616)昭和31年
鎌倉時代から途絶えていた斎王に代わる「斎王代」を中心とする女人列が復興された
先頭 乗尻(のりじり)の騎馬6騎
第1列 検非違使と山城使およびその従者たち
第2列 御幣物をかつぎ供奉(ぐぶ)する官人、馬寮使(めりょうつかい)、紫の藤の花で飾られた御所車
第3列 勅使と勅使に従う舞人(まいびと)
第4列 楽を奏する倍従(べいじゅう)と内蔵使(くらつかい)、花々で飾った風流傘(ふりゅうがさ)
第5列 十二単で腰輿に乗る斎王代と斎王列、それに従う女人たち
総勢511名、馬36頭、牛4頭、牛車2台、輿1台
<勅使(ちょくし)>
行列中の最高位の人で、宮内省式部職の職員が役を務める
葵祭の本来の目的は、勅使が下鴨神社、上賀茂神社で天皇の祝詞を奏上し、お供えを届けることであり、葵祭の主役
束帯姿に金色の飾太刀を挿し、馬面を付けて唐鞍(からくら)を乗せた馬に乗る
<斎王代>
賀茂斎王は、賀茂神社(上賀茂神社<・下鴨神社)の儀式に奉仕する未婚の皇女
五衣裳唐衣(いつつぎぬからぎぬ)(十二単衣)に、十二単衣の上に小忌衣(おみころも)を着る
髪は、おすべらかしで、頂に心葉(こころば)(金属製の飾り物)、日蔭糸(ひかげのいと)(額の両側に下げる飾り)をつける
懐に紅色の帖紙(たとう)を入れ、桧扇を持つ
<乗尻(のりじり)>
行列を先導する騎馬隊
賀茂競馬会神事の騎手
左方(さかた)、右方(うかた)に、競争相手として分かれ、衣装も異なる
<素襖(すおう)>
行列の先払い、行列の警備にあたる
藍色の竜の模様の衣・袴のことを「素襖」と称される
江戸幕府から派遣されたもの
<看督長(かどのおさ)>
検非違使庁の役人
あせた紅色の装束
<検非遣使志(けびいしのさかん)>
警察・裁判を司どる役人
志は、長官より4番目の役職で六位
縹(はなだ)(うすい藍色)の闕腋袍(けってきのほう)(両腋を開けて縫合せずに仕立てた着物)
纓(えい)(冠の後ろにたれているうすもの)の巻いた冠に、冠の両耳のところにつける毛で作った飾り物「おいかけ」をつける
つけ剣を持ち、狩胡ぐい(かりやなぐい)(矢を入れる器具)を背負う
弓は、調度掛が持つ
<検非遣使尉(けびいしのじょう)>
太夫尉(だいぶのじょう)で、長官より3番目の役職で五位の判官(はんがん)
巻いた纓の冠で、おいかけはつけず、縫腋袍(ほうてきのほう)(袖の下より両腋を縫いふさぎ、すそに絹をつけてある着物)
裾(きょ)(束帯の後ろに長く垂れたもの)は、青朽葉色
弓つるを懐中して、馬具にも朱緩の辻総(つじふさ)(房の間隔のあるもの)をつける
<火長(かちょう)>
検非遣使庁(警察機能)の下級役人
<山城使(やましろつかい)>
山城国を治めていた国司庁の次官
緋色の装束に、太刀を持つ
行列が、京都御所内を出ると、すぐに洛外になり、国司の所管になるので、警護のために加えられたといわれる
馬副(うまぞい)、手振(てふり)(馬副の一種)、雑色(ぞうしき)(人夫下僕)、白丁(はくちょう)(御幣櫃などをかつぐ者)等を従える
<衛士(えじ)>
律令制下で、諸国から交替で上京し、宮中衛門府の警備にあたった兵士
御幣物唐櫃(ごへいもつからひつ)を守護する
紺色の装束に、藁靴(わらぐつ)を履く
<御幣物唐櫃(ごへいもつからひつ)>
宮中から上賀茂神社・下鴨神社両社へ納められる御幣物(ごへいぶつ)を入れた唐櫃
<内蔵寮史生(くらりょうのししょう)>
御幣物を司とる内蔵寮の流外官(りゅうげのかん)(本官の下司)で文官
上賀茂神社・下鴨神社各社で、上職の内蔵使(くらづかい)に御幣物を手渡す役
内蔵寮は、金銀宝器を保管し、供進の御服、祭の貢物などを司る役所
七位で、縹色(はなだいろ)の袍の束帯
<風流傘(ふりゅうがさ)>
大きな傘に紺布を張り、錦の帽額総(もこうふさ)などをかけ、造花を飾りつけたもの
袴姿に同じ造花をつけた取物舎人(とりものとねり)の4人が、2人ずつ交代で持つ
<鉾持(ほこもち)>
「放免」と称される司庁の下級役人
<牛車(ぎっしゃ)>
勅使用の牛車は、最高級車で「唐車」と称される
現在の唐車は、霊元天皇から下賜されたものといわれる
周りを軒から、紫の藤の房と杜若の花で飾りつけられる
淡紅の狩衣姿に鞭を持った牛童が、赤綱で飾った大牛の引き綱を取る
替牛が、後に続く
斎王代用は、少し位の下の八葉車
乗り心地は悪く、乗りなれない者は、よく車酔いを起こしていたといわれる
<走馬(そうめ)>
寮馬6匹と、中宮、東宮から献ぜられた馬
2頭の馬の頭と尾には、葵、桂、紙垂れがつけられる
<馬寮使(めりょうつかい)>
走馬を司る左馬允(さまのじょう)(左馬寮の長官より3番目の役職)で六位
武官の束帯姿で、黒漆の弓を調度掛に持たせている
<舞人(まいびと)>
東遊(あずまあそび)を舞う武官
東遊とは、平安時代から、民間舞踊が宮中や神社で行われるようになった神事用の歌舞
舞装束で緋色の無地の闕腋袍(けってきのほう)(両腋を開けて縫合せずに仕立てた着物)に、箔押摺袴(はくすりのはかま)
巻纓おいかけ(まきえいおいかけ)の冠
<朧(くとり)>
内蔵寮の御馬の役人
<随身(ずいしん)>
高官の警護にあたる者
<牽馬(ひきうま)>
勅使の替え馬
帰路は、牽馬に乗り換えられる
<陪従(べいじゅう)>
歌楽を奏する武官で、勅使に陪従する7名
葵祭に特有な様式の楽人装束
帯剣で騎馬する
<内蔵使(くらつかい)>
御祭文を捧持する内蔵寮の次官
<命婦(みょうぶ)>
一般の女官
小袿(こうちき)、単、打袴を装い、花傘をさしかける
<女嬬(にょじゅ)>
食事を司る女官
小袿(こうちき)、単、打袴を装う
<童女(わらめ)>
行儀見習として奉仕する少女
<腰輿(およよ)>
斎王代が乗る乗り物
<騎女(むまのりおんな)>
斎王代付の神事を司る清浄な巫女(みかんこ)
騎馬で参向する
<内持(ないじ)>
身分の高い貴族の娘から選ばれた女官
<采女(うねめ)>
斎院の神事を司る女官
地方の豪族の娘から選ばれる
斎王代と同じように額の両側に日蔭糸を垂れて飾る
彩色模様の青海波(せいがいは)の装束
<女別当(おんなべっとう)>
斎院の内持以下、女官を監督する役
<蔵人所陪従(くらうどどころべいじゅう)>
斎院の物品や会計を司る蔵人所の雅楽を演奏する文官
それぞれ楽器を持つ
<女房車(にょうぼうくるま)>
斎王の牛車
葵と桂のほかに、桜、橘の飾りがつけられる
午前10時
京都御所内で「進発の儀」が行われる
宜秋門(ぎしゅうもん)から出発して建礼門前を下り京都御苑を出る
堺町御門 → 丸太町通 → 河原町通 → 下鴨神社
社頭の儀
下鴨本通 → 洛北高校前 → 北大路通 → 北大路橋 → 賀茂川堤(賀茂街道) → 上賀茂神社
社頭の儀