山伏山(やまぶしやま)は、祇園祭における山鉾の一つの山
御神体の浄蔵貴所が、山伏の姿をしていることから「山伏山」と称される
<御神体>
山伏の姿をしている
かつて、八坂の法観寺の塔が傾いたとき、
法力によって傾きを直したという浄蔵貴所が、修行のために大峯入り(おおみねいり)する姿をあらわしている
頭に頭襟(ときん)、山伏の法衣である篠懸(すずかけ)を着て、山伏独特の袈裟で最高位の緋色の菊綴(ぼんてん)の
付いた結袈裟(ゆいげさ)を懸け、腰には法螺貝(ほらがい)、左手に刺高珠数(いらたかじゅず)を持ち、
右手で峰入り十六用具の斧を担いでいる
錫杖(しゃくじょう)・笈(おい)・肩箱・引敷(ひっしき)・脚絆(きゃはん)など修験十二道具を付けている
宵山では、町会所の2階に祀られ、路上から拝観できる
<欄縁金具>
欄縁は飛鶴で、足は黒味の毛彫で両端に雲
<水引>
正面水引は、左に雲中の龍、右に青海波に麒麟
中国の緻密な刺繍
回りは、桐と竹の日本製の大柄な刺繍、下端は浅葱色の七宝編のくみひもで、2番水引が見えるようになっている
両側水引は、楼閣と人物、養蚕・繭から糸を紡ぎ布が織り上がるまで描いた機織図(きしょくず)
狩野派の下絵の綴錦(つづれにしき)
2番水引は、緋地に花と葉の刺繍を交互に並べたもの
1891年(皇紀2551)明治24年
元治の大火(1864年(皇紀2524)元治元年)で焼失した南隣の菊水鉾から水引など9点を譲り受け、翌年から用いられている
<前懸>
鳶色地に五爪龍を金糸2段に4頭ずつ並べ、空間は華と雲で、下部は岩波の刺繍
<胴懸>
花卉胡蝶文(かきこちょうもん)の綴錦
<見送>
五爪龍を3段に3、2、3頭並べた龍波涛文(りゅうはとうもん)の中国の金糸刺繍の綴錦
<飾り房>
前懸・胴懸の中央に飾り房を付けているのが、山伏山の特徴でもある
<聖護院山伏参詣>
16日
聖護院門跡の山伏約30人が、六角堂を出発し、法螺貝を吹き鳴らし、錫杖(しゃくじょう)を響かせながら、
修験道に縁のある7つの山を巡拝し、御神体の前で般若心経を唱え、巡行の無事や町内の発展を祈願する
<神仏習合>
明治時代以前の神仏分離以前の形式が残る
山の巡行の数日前には、聖護院門跡の山伏たちの巡拝がある
八坂神社からの清祓(きよはらい)、六角堂から法印(ほういん)の祈祷(きとう)が行われる
神供を供える三宝は、仏式の黒塗のものが用いられている
<修験道>
奈良時代初期に、役行者小角(えんのぎょうじゃおづぬ)が、大和葛城山に開いた日本独特の山岳信仰
天台宗や真言宗の密教僧も山で修行を積んで霊験を持ったといわれる
江戸幕府の政策により「本山派」「当山派」の2つに分かれ、聖護院門跡が、本山派の中心寺院とし全国に2万余の末寺をかかえる
修験道に関する山鉾には役行者山ら7つある
<重要無形民俗文化財>
1979年(皇紀2639)昭和54年2月3日指定
橋弁慶山・霰天神山・山伏山・北観音山・南観音山・放下鉾・役行者山の7山鉾町内
<お守り>
宵山に雷除けのお守りが授与される
剣先の形で、赤い宝珠の印と呪文が入った特殊な護符になっている