橋姫之古蹟(はしひめのこせき)は、源氏物語後半の宇治を舞台に描かれた宇治十帖のゆかりの地の一つ
「橋姫(はしひめ)」は、「源氏物語」第45帖、宇治十帖の第1帖
橋姫神社の祭神の瀬織津姫神が、宇治橋の守護神の「橋姫」とされる
「宇治十帖」は、「その頃、世に数まへられ給はぬふる宮おはしけり」と書き始められている
そのころ世の中から忘れられた宮、桐壺院の八の宮(第8皇子)で、光源氏(ひかるげんじ)の異母弟がいた
東宮の冷泉上皇を廃して代わりに八の宮を東宮に擁立しようとした弘徽殿大后方の陰謀に加担したことで
落ちぶれてしまっていた
そして、北の方(きたのかた)に先立たれて、宇治の地で出家を望みながらも、大君と中君の2人の姫君を
養育しつつ過ごしている
宇治山の阿闍梨から八の宮を紹介してもらった薫君(かおるのきみ)は、その俗聖(ぞくひじり)ぶりに強く惹かれ
八の宮のもとに仏道修行へ通うようになる
通い始めて3年目の晩秋、八の宮が不在の宇治邸を訪れた薫君は、有明の月の下で、箏と琵琶とを合奏する
姫君たちを垣間見る
薫君は、屈託がなく気品が高い優雅な姫君たちに心惹かれ、
「橋姫の心をくみて高瀬さす 棹(さお)のしづくに袖ぞぬれぬる」と詠んで大君に贈る
薫君は、八の宮の女房を介して大君に逢いたく思うが、代わりに老女房の弁(べん)が現れる
弁は、故柏木の乳母子(めのとご)(乳母の娘)で、今は八の宮の侍女をしている
弁は、薫君の出生の秘密と柏木の遺言を伝えることを約束する
京に戻ってから薫君は大君と弁の言葉が気になって頭から離れない
薫君は、匂宮(におうのみや)に宇治の姫君たちのことを語り、匂宮は姫君たちへの興味をもったせてしまう
10月上旬、八の宮は、薫君に、姫君たちのことを打ち明け、死後の後見を託したいと願い出る
その晩、薫君は弁と昔語りをし、弁から手紙の束を入れた袋を受け取る
帰京後、開けてみると、かび臭くなっている柏木と女三宮の手紙の束が出てきた
女三宮の出産を喜ぶ柏木の死の間際の筆跡のあまりの生々しさに、薫君は戸惑う
そして、薫君は、自分が光源氏の本当の実子ではないことを知る
薫君は、母女三宮を訪ねるが、無心に経を読む尼姿を見て、秘密を知ったことを話す気になれなくなり、
一人胸中に抱え込もうとする
<橋姫>
薫君が、大君にあたて詠んだ「橋姫の心を汲みて高瀬さす棹のしづくに袖ぞ濡れぬる」にちなむ
俗聖の八の宮を「優婆塞」と称し、本帖の異名で「優婆塞」とも称する
<橋姫神社>
祭神の瀬織津姫神が、宇治橋の守護神の「橋姫」とされる
水の神さんである住吉神社も祀られている
かつては、宇治橋の三の間に祀られていた
古代から、水辺や橋には心霊が宿るところとされており、橋姫には多くの故事がある