宿木之古蹟(やどりぎのこせき)は、源氏物語後半の宇治を舞台に描かれた宇治十帖のゆかりの地の一つ
「宿木(やどりぎ)」は、「源氏物語」第49帖、宇治十帖の第5帖
宇治川の左岸、府道大津南郷宇治線と沿い始める辺りに宿木之古蹟碑がある
薫君(かおるのきみ)は、天皇から、母女御を亡くし後見人もいない娘の二宮(にのみや)を託したいと告げられるが、
亡き大君(おおいきみ)を忘れかねる薫君は、気が進まないままに承諾する
これを知った夕霧左大臣は、娘の六の君(ろくのきみ)を匂宮(におうのみや)と結婚させることにし、
8月16日が婚儀の日と決まる
匂宮に迎えられ、京の二条院に住む中君(なかのきみ)には、大変な衝撃を受ける
気の進まないまま夕霧の婿となった匂宮だが、六の君の美しさの虜となり、中君とは次第に夜離れが多くなる
中君は、5月頃に懐妊し体調の悪い状態が続いていたが、経験に乏しい匂宮はそれに気づかず、
中君は心寂しい日々が続いており、訪れた後見人の薫君に宇治に帰りたいと心内を漏らす
薫君は、中君の話し相手から次第に、亡き大君の現し身の中君への慕情に変わっていく
ある夜、薫君は中君へ想いを告白するが、匂宮の子を身ごもっていた中君が愛おしくなり自制する
帰邸した匂宮は、中君に薫君の移り香がするのを怪しみ、中君を問い詰めようとし、
匂宮は、次第に中君のもとにいることが多くなる
二条院に中君を訪れた薫君は、宇治に大君の人形(ひとがた)を作り勤行(ごんぎょう)したいと話す
中君は、薫君の気持ちをそらそうとして、亡き大君に似た異母妹の浮舟(うきふね)がいることを薫君に話す
秋、薫君は、宇治の山荘を御堂に改造することとし、八の宮の老女房だった弁尼(べんのあま)を訪れる
そして共に大君の思い出に浸り、歌を詠み交わす
薫君は、その歌の「宿りきと思い出でずば木(こ)のもとの 旅寝もいかに寂しからまし」という歌を、
紅葉した蔦(つた)に添えて、中君への土産にと届け、匂宮に恨まれる
翌年2月、中君は、無事に男児を出産する
薫君は、権大納言兼右大将に昇進し、二宮と結婚する
4月下旬、宇治を訪ねた薫は偶然、初瀬詣で長谷寺の帰路に宇治の邸に立ち寄った浮舟一行と出会い、
垣間見た浮舟が、亡き大君に生き写しのように似ていることに驚き、心を強く惹かれ、弁尼に仲立ちを願い出る
<宿木>
薫君が弁尼と詠み交わした歌にちなむ
「宿りきと思い出でずば木のもとの旅寝もいかに寂しからまし」
「荒れ果つる朽木のもとをやどりきと思ひおきけるほどのかなしさ」
前者の歌は、紅葉した蔦(つた)に添えて、中君への土産に届けられる
<宇治川沿いの宿り木>
エノキやサクラなどに寄生し、宿主の木が落葉した後も、その梢に枯れることなく黄緑色のまま着いている植物
宇治川のほとりのあちこちで見ることができる
歌に詠まれている「やどり木」とは別のもの
歌の「宿りき」は、「以前、ここに泊まりました」という意味との掛詞といわれる
<宿木之古蹟碑>
宇治川の左岸、喜撰橋の南、あじろぎの道の
府道大津南郷宇治線と沿い始める辺りに石碑がある