菩薩(ぼさつ)とは、いずれ如来になるために悟りを求める修行中をしながら、人々に現世利益の福徳を授けてくれる仏
現在は、仏教の世界の真ん中にある須弥山(しゅみせん)の上空にある兜率天(とそつてん)という天界で修行をしている最中
56億7000万年後に菩薩から如来になれるとされる
菩薩は、いずれ如来になるべく悟りを求めながら、人々に現世利益の福徳を授けてくれる仏
釈迦如来の後継者を「仏嗣」と称し、「仏嗣弥勒」「未来仏」「慈氏菩薩」「当来仏」などと称される
悟りを開く前の修行時代の仏陀のことや、釈迦の前生の姿も「菩薩」と称されていた
<サンスクリット語>
菩薩は、音訳「ボーディ・サットバ」を略したもの
ボーディは「菩提」を、サットバは「生きている者」を意味することから、菩薩は「悟りを求める者」とされる
<菩薩の種類>
既に悟りを得ているにもかかわらず、成仏にならなかった菩薩
釈迦三尊の文殊菩薩と普賢菩薩や、地蔵菩薩や虚空蔵菩薩など
仏陀になると活動に制約があるために、菩薩にとどまって仏陀の手足となって救済の活動している
自らの成仏とは関わりなく、救済の活動を続ける菩薩
観世音菩薩、勢至菩薩など
菩薩と尊称された初期大乗仏教の学僧たち
龍樹菩薩、世親菩薩、天親菩薩など
神仏習合により日本の神さんの号として尊称された
八幡大菩薩(八幡大神)、妙見大菩薩(天部の仏)など
朝廷より菩薩の号を賜った日本の高僧や偉人たち
神変大菩薩、経王大菩薩、行基菩薩、興正菩薩(叡尊)、日蓮菩薩、日朗菩薩、日像菩薩など
<菩薩の姿(像容)>
釈迦が出家される前の姿が元になっている
地蔵菩薩など一部を除いて、インドの王族や貴族の服装で、豪華な装飾品を身にまとった姿をしている
髪は結い上げられ、結い残した髪は肩を覆い「髪(すいほつ)」と称される
額には如来と同じく白毫がある
下半身には巻きスカート状の衣(裳(も)・裙(くん)をまとう
左肩と右腰を巻くように、たすき状の飾り布(条帛(じょうはく)を掛ける
宝冠(ほうかん)
貴金属や宝石をつないだ飾り(瓔珞(ようらく)
アームレットのような臂釧(ひせん)
ブレスレットのような腕釧(わんせん)
アンクレットのような足釧(そくせん)
イヤリングのような耳とう(じとう)
肩や腕に掛ける細長い飾り布(天衣(てんね、)などの装身具を身につける
左手に蕾の蓮華を持ち、右手の指先でその花びらを開かせようとしている
蕾の蓮華は、簡単には悟ることができない心、右手の先指は、それを開かせようとする仏心を表している
光り輝く身体を表現する光背を背後に負う
蓮華座と称するハスの花を象った台座の上に座ったり立っている
禽獣座(きんじゅうざ)と称する、動物の背に乗る場合には、動物の背の上に蓮華を載せ、その上に乗る
仏像の頭の数を「面」、手を数を「臂(ひ)」と称する
「華厳経」や「菩薩瓔珞本業經」では、菩薩の境涯や修行の階位を52の位(くらい)に分けられている
菩薩が仏の悟りを得ようと努力する段階が、52あるとされる
弥勒菩薩は、51段目の等覚(とうかく)の悟りを得ている最高位の菩薩
あと一段上って仏の悟りを開くまでには、56億7000万年かかると、多くの経典に記されている
手足が腐るほど修行した達磨大師は、30段ほど
中国の高僧 天台(てんだい)は、9段目までといわれる
<妙覚(みょうかく)>
菩薩修行の階位である52位の最後の位
等覚位の菩薩が、さらに一品(いっぽん)の無明を断じて、この位に入る
一切の煩悩を断じ尽くした位で、仏陀・如来と同一視される
<等覚(とうかく)>
菩薩修行の階位の51位であり菩薩の極位
智徳が略万徳円満の仏陀、妙覚と等しくなったという意味で「等覚」と称される
<十地(じっち)>
菩薩修行の階位の第41〜50位まで
上から法雲・善想・不動・遠行・現前・難勝・焔光・発光・離垢・歓喜の10位
仏智を生成し、安定して住持して、その位の法を持つことによって果を生成する位
<十廻向(じゅうえこう)>
菩薩修行の位階の第31〜40位まで
上から入法界無量廻向・無縛無著解脱廻向・真如相廻向・等随順一切衆生廻向・随順一切堅固善根廻向・
無尽功徳蔵廻向・至一切処廻向・等一切諸仏廻向・不壊一切廻向・救護衆生離衆生相廻向の10位
これまでの修行で得た功徳を、一切衆生のために回らし(めぐらし)転じて振り向け、自他ともに成仏しようとする位
<十行(じゅうぎょう)>
菩薩修行の位階の第21〜30位まで
上から真実・善法・尊重・無著・善現・離癡乱行・無尽・無瞋根・饒益・観喜の10位
衆生の救済のために尽くす修行を行い、布施・持戒・忍辱・精進・禅定・方便・願・力・智の十波羅密に努める位
<十住(じゅうじゅう)>
菩薩修行の位階の第11〜20位まで
上から灌頂・法王子・童真・不退・正信・具足方便・生貴・修行・治地・発心の10位
十信位を経て心が真実の空の理に安定して住する位
<十信(じゅうしん)>
菩薩修行の位階の第1〜10位まで
上から願心・戒心・廻向心・不退心・定心・慧心・精進心・念心・信心の10位
菩薩として持つべき心のあり方を身につける位
経典などや、いろいろな教えを元に、さまざまな形態の菩薩が生まれている
<観音菩薩>
観世音菩薩、観自在音菩薩とも称される
救う相手によって姿を千変万化するといわれる
<六観音>
六道のそれぞれの衆生を救うための6体の観音菩薩
あらゆる生命は6つの世界で生まれ変わりを繰り返すといわれる六道輪廻(ろくどうりんね)の思想に基づく
<聖観音菩薩>
地獄道の菩薩
多様な姿をもつ観音の基本形で、ほぼ人間と同じ姿をしている
観音信仰で生まれてきた様々な変化観音と区別するために「聖観音(正観音)」と称される
<千手観音菩薩>
餓鬼道の菩薩
千本の手で、苦しむ広範囲の人々を救済する
奈良時代から篤い信仰を集めるようになった
千手千眼観世音菩薩とも称される
42臂の仏像が多く、中央の2臂を除く40本の手が1手につき25の衆生を救うとされ、40x25で1000になる
頭の上に11面の化仏をのせて、本面に三眼を持ち、掌のそれぞれに一眼ずつ持つ
それぞれの手には、日・月・輪宝・宝珠・弓などを持つ
<馬頭観音菩薩>
畜生道の菩薩
馬が周囲の草をむさぼるように、すべての魔や煩悩をうち伏せて人々を救済する
恐ろしい忿怒相で、体の色は赤、頭上に白馬頭をのせ、三面三目八臂の立像が多い
手は、胸前で馬の口を模した「馬頭印」という印相を示す
<十一面観音菩薩>
修羅道の菩薩
あらゆる方向に目を向けて人々の苦しみを見逃すことなく救済する
頭部に小さな十一の面相がつけられている
正面の三面は、穏やかな慈悲の菩薩相
左の三面は、恐ろしい怒りを持つ瞋怒相
右の三面は、菩薩相に似ていて、上方に牙をむき出している白牙上出相
後部の一面は、大笑している大笑相
頭頂には、正面を向いて、如来相が付けられている
左手に水瓶を持ち、右手は前に向けて開く施無異手になっている
<准胝観音菩薩>
人道の菩薩(真言宗系)
修道者の守護、無病息災、延命、安産・子宝などの現世のご利益がある
本来の名前は「七倶胝仏母(しちぐていぶつぼ)」と称され、観音ではなく菩薩の母であったとされる
一面三目十八臂で、中央の手は説法印と施無畏印を結び、武器や珠数、蓮華などを持っている
<不空羂索観音菩薩>
人道の菩薩(天台宗系)
観音が持つ大慈悲の網で、煩悩の世界で苦難するすべての人々をもらさず救済する
一面三目八臂で、鹿の毛皮を身にまとう立像、坐像が多い
胸の前で二手が合掌し、二手は与願印を結んでいて、その他の四手には、網や綱の羂索や蓮華などを持つ
<如意輪観音菩薩>
天界道の菩薩
どこにでも現れ、六道の衆生の苦を除き、全ての願いを叶えてくれる
一面六臂が多く、全て坐像か、脚を組む半跏趺座で立像は少ない
右手を頬や顎に当て、一手は胸前に如意宝珠を持ち、一手は肩上に掲げた指先に法輪(輪宝)をのせている
その他の菩薩
<弥勒菩薩>
未来に釈迦の後継者の如来となることを約束されている最高位の菩薩
釈迦が没した56億7千万年後に衆生を救済するといわれている
仏像としては菩薩と如来の像の両方が存在し、考えているポーズの「半跏思惟(はんかしゆい)」が多い
<普賢菩薩>
修行者の守護をする菩薩
六本の牙をもつ白い象に乗っている
文殊菩薩とともに、釈迦如来の脇侍として祀られることが多い
<文殊菩薩>
「三人寄れば文殊の智恵」といわれる智恵の菩薩
獅子に乗り、蓮華の台座に座った姿で表される
普賢菩薩とともに、釈迦如来の脇侍として祀られることが多い
<虚空蔵菩薩>
智恵を司る菩薩
地蔵菩薩と同じく多くの恵みを与える
記憶力強化のご利益があるといわれる
<勢至菩薩>
阿弥陀如来の右側の脇侍の菩薩
迷いと戦いの世界の苦しみから知恵を持って救うといわれる
宝冠の前面には水瓶を付け、来迎形式では合掌する姿で表される
<地蔵菩薩>
釈迦入滅から56億7千万年後、弥勒菩薩がこの世に現れるまで衆生を救済する菩薩
平安時代以降、地獄に堕ちた衆生を救ったり現世に蘇生させたりし、無限の大慈悲の心で包み込むといわれる
道祖神としての性格を持ち、子供の守り神としても信仰されている