玉鳳院(ぎょくほういん)は、花園天皇の塔所で、妙心寺における最初の塔頭で、46の塔頭の中でも最も由緒ある寺院
表門を入って正面が庫裡で方丈へ続く、方丈と開山堂が、渡り廊下で結ばれている
その渡り廊下の北と南に庭園が造られている
<向唐門>
方丈の正門
唐破風が正面にある
寛文年間(1661年〜1673年)
大阪の淀屋辰五郎の寄進といわれる
<方丈(重要文化財)>
開山堂の西に建ち、渡り廊下で結ばれている
単層、入母屋造、檜皮葺、寝殿風の建物
もと花園法皇の離宮跡
中央奥の昭堂に、花園法皇の法体姿の木造が安置されている
前方下段の東側には、徳川家康や徳川家の位牌、
西側に豊臣秀吉、織田信長、織田信忠、武田信玄などの位牌が安置される
上間一之間は、「拈花室(ねんげしつ)」と称される
正面の「玉鳳禅宮」の扁額は、後花園天皇の宸筆
襖絵は、金地着色の「秋草図」は狩野益信の筆
「麒麟図」「花鳥図」「龍図」「山水図」「牡丹図」は狩野安信の筆
「桐鳳凰図」は作者不明
創建当時の建物は、応仁の乱で焼失
1656年(皇紀2316)明暦2年の再建
<開山堂(重要文化財)>
「微笑庵(みしょうあん)」とも称され、扁額が掲げられている
正面三間(桁行)、梁間四間(奥行)、一重入母屋造、本瓦葺
一重禅宗様三間堂(ぜんしゅうようさんげんどう)の代表建築
広い一室で四半敷
正面、拝所の奥の昭堂に、開山 関山慧玄の尊像が安置される
1537年(皇紀2197)天文6年
東福寺から移築されたもの
室町時代の建物で、妙心寺山内で現存する最古のお堂
妙心寺山内でも、最も神聖な場所
<四脚門(重要文化財)>
開山堂前の平唐破風門
檜皮葺き、「一本彫成」の唐破風が両横にある
四脚門は、一般的に平安時代以降に貴族住宅に多く用いられる
応仁の乱での焼失から逃れられており、破風板・懸魚・桁隠し・梁・冠木・蟇股などは、創建当初のもの
1409年(皇紀2069)応永16年
後小松天皇から、御所の南門を寄進されたもの
勅使門とされていたが、後に、現在の場所に移された
門には、応仁の乱の鏃(やじり)の跡が残っている
現存する、最古の唐門
<経蔵(重要文化財)>
桁行1間、梁間1間、一重裳階付
二重屋根本瓦葺
1673年(皇紀2333)寛文13年の創建
<庭園(国の史跡、名勝)>
3つの庭園からなる
江戸時代初期の作庭
南庭
方丈と開山堂とが並ぶ南前面の、幾何学模様をあしらった枯山水庭園
一面に白砂が敷き詰められ砂紋を描き、その間に御影の切石の延段が幾何学的に組み敷かれている
唐門と高塀に沿って、五葉松と黒松の大樹が2本成育している
五葉松の下は、太い幹を中心に波紋が広がっている
黒松の下は、菊水を表した模様が砂で描かれている
切石で区切られた区画ごとに、横線と縦線の砂紋が描かれている
開山堂の前には、玉鳳院型(妙心寺型)の唐物風の彫刻をほどこした一対の灯籠が置かれている
山岳の庭
開山堂の東に、築山を築いて、多くの石を使って山岳風に石組みがされている
インドの仏跡にみたて「鶏足嶺(けいそくれい)」と称される
風水泉の庭
方丈と開山堂とを結ぶ廊下の北側の中庭
蓬来式と須弥山様式とを併せた枯山水庭園
「風水泉」と称される井戸と、蓮華を刻んだ棗型手水鉢(なつめがたちょうずばち)がある
関山慧玄が、二世 授翁禅師に託して、風水泉わきの老樹の下で、行脚の旅姿で亡くなったといわれる霊地とされる
風水泉から、棄丸の廟に向かって飛石がおかれ、飛石の左右の石組みが、峻厳な須弥山が表され、
中央の巨石の周囲を取り囲むように円状に石がおかれている
<玉鳳院型手水鉢>
蓮葉の台石に、棗型(なつめがた)の手水鉢を乗せた珍しいもの
<風水泉>
開山の無相大師が、傍らで立ったまま死去されたといわれる井戸
<祥雲院殿(しょううんいんでん)霊屋(おたまや)>
開山堂の北の奥に建つ小廟
3m四方の禅宗様建築
豊臣秀吉と淀君との長男 棄丸(鶴松)の像が安置されている御霊屋
1591年(皇紀2251)天正19年
棄丸は三歳で死去
棄丸の後見役の石河光重の兄が、妙心寺養徳院に住していたことから、葬儀が妙心寺で行われた
棄丸が愛用していた玩具などが所蔵されている
<織田信長・武田信玄石塔>
開山堂の東北隅
武田信玄と、武田三武将(武田勝頼・武田信勝・武田信豊)の石塔
隣に、織田信長・織田信忠の石塔が立っている
<鐘楼>
庫裡の横にある
銅鐘は、1610年(皇紀2270)慶長15年に鋳造されたもの
<牛石>
開山堂の前にある牛の形をした自然石
開山 関山慧玄が、伊深(現在の岐阜県美濃加茂市)にいた頃、牛を使って草を刈り田畑を耕す生活をしていた
花園天皇の招請を受けて京に上るとき、その慣れ親しんだ牛が涙を流して後を追ったといわれる
この逸話に基づき、開山が亡くなって600年に当たる1959年(皇紀2619)昭和34年
滋賀県安土町の摠見寺で、この牛石が見つかり、開山堂の前に奉納された
<方丈の襖絵>
金地着色の「秋草図」は狩野益信の筆
「麒麟図」「花鳥図」「竜虎図」「山水図」「牡丹図」は狩野安信の筆
<棄丸の玩具(重要文化財)>
棄丸が愛用していた木造玩具船や守り刀、小型武具などが寄進され所蔵されている