<過去現在因果経(かこげんざいいんがきょう)>
5世紀中頃に、劉宋の求那跋陀羅(ぐなばつだら)により漢訳された経典
全4巻
釈迦の前世における善行から、現世で悟りを開くまでの伝記を説いている
釈迦は、過去生において善慧仙人として善行を積んでいたところ、普光如来から将来成仏することを予言され、とう利天に上った
その前世の因縁により、釈迦がとう利天から現世に誕生し、四門出遊・出家・苦行・降魔など修行を積み度大迦葉にいたるまでの
過程を三六場面の説話で述べている
<絵因果経>
「過去現在因果経」に絵を描き加えて、釈迦の生涯と前世の物語を分かりやすく伝える手段として作成された経典
巻子本の下段に経文を書写し、上段にそれを絵解きした絵画を描く形式になっている
全8巻に仕立てられる
6世紀末から7世紀初期に中国で製作されたといわれる
日本でも、中国の原本に基づいて制作され、奈良時代のものと、平安時代以降のものがある
<古因果経>
奈良時代に制作された絵因果経
画風は、中国の初唐(7世紀頃)の画風が元になっているといわれる
奈良時代の絵画を現在に伝える数少ない貴重な遺品
奈良時代に制作された絵因果経は、5つ残されている
これらは、それぞれ画風や経文の書風が微妙に異なっており、別々のセットから1巻だけが残ったものといわれる
また、数行から数紙の断簡として、諸家に分蔵されているものもある
<上品蓮台寺本(国宝)>
上品蓮台寺の所蔵
巻第二上
巻頭に「薬師寺印」がある
巻末部分が欠失している
上品蓮台寺本の欠失部分にあたる断簡
大原美術館本(24行)(重要文化財)
奈良国立博物館本(62行)(重要文化財)
<醍醐寺本(国宝)>
醍醐寺塔頭 報恩院の所蔵
巻第三上
全体が残っている完本
<東京芸術大学本(国宝)>
巻第四下
巻頭に「興福伝法印」がある
上品蓮台寺本、醍醐寺本よりは、やや新しい作品といわれる
本巻の一部は断簡として以下に分蔵されている
湯木美術館(15行)(掛幅装)・五島美術館(5行)(写経手鑑「染紙帖」所収)・MOA美術館(4行)(手鑑「翰墨城」所収)
<出光美術館本(重要文化財>
巻第三上
全体が残っている完本
巻頭に「興福伝法印」がある(東京芸術大学本とは異なるもの)
益田家が旧蔵していたもの
<旧益田家本>
巻第四上
巻第四上のうち10紙分が残っていたことから、「益田家十紙本」とも称される
益田家が旧蔵していたもの(出光美術館本とは異なるもの)
本巻の一部は断簡として以下に分蔵されている
MOA美術館(84行)(重要文化財)・五島美術館(24行)・東京国立博物館(18行)・米国の個人(10行)、MIHO MUSEUM(25行)