君台観左右帳記(くんだいかんそうちょうき)は、足利義政の東山御殿内の装飾・座敷飾りに関する秘伝書
同朋衆や、能阿弥、相阿弥により記録された
当時の美術鑑賞の方式なども記されている
唐絵鑑定、茶陶を中心とした美術工芸史、茶華香道の基礎史料となる
原本はなく、写本が残されている
芸術鑑賞の仕方、美術品の扱い方について基本的知識・方法が記されている
書名の「君台」は「将軍の御座所」のこと
足利義政の東山御殿内の飾り方についての左右の侍者の帳記(記録)という意味がある
内容は3部構成
第1部:中国の六朝から宋・元時代の中国画人の約150人の品評(上・中・下)と、字・号・出身地・画題・画体などを列挙
唐絵(からえ)鑑賞の指針を示している
第2部:掛幅を中心とした座敷飾りの方式の解説と図解(御飾記)
座敷飾りについて、画軸による花や置物の飾り方式が記されている
押し板に三幅一対、または、五幅一対の場合には、必ず三具足(みつぐそく)を置くとされる
四幅一対の絵のかかるときは、花瓶か香炉を置き、脇の花瓶はそのまま置くとされる
第3部:飾り付けの道具となる「茶湯棚飾」「抹茶壺図形」「土物類」「彫物」の図解
その鑑識・用法の秘訣が記されている
150以上の写本や刊本がある
概ね、能阿弥本と相阿弥本の2系統に別れる
まず、能阿弥が制作し、別の同朋衆によって追記され、これを継承しつつ大成したものが相阿弥本とされる
残されている写本としては、相阿弥本系の東北大学所蔵本がもっとも古い
第1部のみを独立させたものや、関連した「君臺觀印譜」「座敷飾」なども発刊された
<能阿弥本>
複数のものがある
「群書類従」巻361に所収されたもの
1476年(皇紀2136)文明8年3月11日付けの大内左京大夫(大内政弘)に宛に書かれたとするものに、能阿弥が奥書したもの
それを百花庵宗固(萩原宗固)が筆写した本を、大久保酉山の蔵本と校合
1898年(皇紀2558)明治31年
塙保己一により編集された
近代デジタルライブラリー所収
「群書類聚」新校版
近代デジタルライブラリー所収
上50人、中28人、下68人、計156人(内1人重複)の画品が記されている
<相阿弥本>
複数のものがある
東北大学所蔵本
1511年(皇紀2171)永正8年10月16日付け真相(相阿弥)の奥書と花押
永禄年間(1558年~1570年)
模写される
上49人、中41人、下87人、計177人の画品が記されている
諸本の中で最も信頼されるものといわれる
博物館本
松翁居士が、1511年(皇紀2171)永正8年10月16日付け真相(相阿弥)の奥書と花押を模写した写本を
1884年(皇紀2544)明治17年
刊行される
上44人、中41人、下87人、計172人の画品が記されている
中国絵画鑑定本
第1部の部分や、他の画譜に収録された本・印譜を追加した本
「君臺觀」(君臺觀印譜)
1647年(皇紀2307)正保4年
吉田傳右衛門による刊行
百度文庫所蔵
「図絵宝鑑」巻5
1652年(皇紀2312)承応元年の吉野屋権兵衛により刊行されたものを
1667年(皇紀2327)寛文7年に狩野安信が朱筆書入れをして「図絵宝鑑」巻5として所収される