並河靖之(なみかわやすゆき)は、明治時代に京都を中心に活躍した日本を代表する七宝家
七宝焼の原点である金銀線を用いた有線七宝にこだわり極めた
内国勧業博覧会やパリなど各地の博覧会で表彰され、帝室技芸員となった
<鳳凰文食籠>
1873年(皇紀2533)明治6年12月の処女作
並河靖之七宝記念館蔵
当初、久邇宮朝彦親王に献上されたが、後に他の作品と交換返却してもらう
<舞楽図花瓶>
1877年(皇紀2537)明治10年、第1回内国勧業博覧会 鳳文賞受賞
三の丸尚蔵館蔵
<黒地四季花鳥図花瓶>
1900年(皇紀2560)明治33年、パリ万国博覧会 金賞受賞
三の丸尚蔵館蔵
<散水楼閣文香炉>
1912年(皇紀2572)大正元年、大正天皇御大典の記念として制作されたといわれる
東京国立博物館蔵
<有線七宝技法>
図柄の輪郭線に沿って細い金銀線をかたどり、その中に釉薬を挿し焼成する技法
金銀線が繊細な図柄を引き立たせることができる
並河靖之は、有線七宝こそ七宝の本流で、線の美しさこそ七宝の本質だとして、有線七宝の技術を発展させた
無線七宝、省線七宝、盛上七宝、省胎七宝等の技法は用いられていない
三条白川一帯には、20数軒の七宝業者あり、切磋琢磨された
釉薬にも研究を重ね、明度や彩度がる艷やかで潤いある多彩な色彩を持つ
金属線も、均一で厚みのある真鍮線から、銀線や金線を使用することで線幅をより細くした
金属線に肥痩を付け、図柄に躍動感を与え、金銀線それ自体を一つの色彩とした
非常に手間暇がかかり、1つの作品を作るのに1年以上かかることもある
<釉薬>
作品の色彩の豊かさと色彩の透明感が特徴
釉薬の鉱物の分量や配合の割合、焼成する際の時間や温度について研究を尽くし、
明度の異なる釉薬を10種類以上用いて、多くの色彩や色彩のグラデーションを作り上げた
<黒色透明釉>
黒色透明釉の発明により、透明感のある深い黒が出せるようになった
色鮮やかで精緻な図柄を際立たせている
<花鳥風月>
花鳥風月を題材にしたものが多い
並河家の家紋が蝶だったこともあり、蝶をデザインの題材としてよく用いられている
<並河靖之七宝記念館>
京都市東山区三条通北裏白川筋東入堀池町
七宝作品、旧邸宅や工房(国登録有形文化財)、七代目小川治兵衛の手がけた庭園(京都市指定名勝)が
一般公開されている
作品141点、下図類989点、道具類532点の計1,662点が「並河靖之七宝資料」として国の登録有形文化財に登録されている
<清水三年坂美術館>
海外から並河靖之の作品など、明治時代の工芸品を買い戻している
並河靖之の銘を持つ作品は、約100点所蔵されている
<動物が好き>
幼い時には、近くの本能寺の馬場へ遊びに行っていたといわれる
大坪流馬術の達人で、伏見宮や閑院宮にも馬術を教えていたといわれる