仮名手本忠臣蔵(かなでほん ちゅうしんぐら)は、人形浄瑠璃および歌舞伎の代表的な演目
「菅原伝授手習鑑」「義経千本桜」とならぶ人形浄瑠璃の三大傑作といわれる
「仮名手本忠臣蔵」とは、赤穂四十七士を、いろはの47字にかけて「仮名手本」、
「忠臣大石内蔵助」から「忠臣蔵」とされたといわれる
全十一段におよぶ大長編歴史物
二代目 竹田出雲(初演した大阪竹本座座長)と並木千柳・三好松洛(みよししょうらく)らの合作
幕府の咎めを避けるために、作品内では、「大石内蔵助」を「大星由良之助」(おおほしゆらのすけ)」とされている
大きく分けて、4編の物語で構成される
<義士の仇討ち>
元禄赤穂事件を「太平記」の世界で描いた物語
伯州大名 塩冶判官高貞(えんや はんがん たかさだ)が、
日頃から意地悪をされている幕府執事 高師直(こうのもろのう)に耐えかね斬りつける
塩冶判官は、切腹させられ、お家断絶になる
塩冶判官の家臣 大星由良之助義金(おおぼし ゆらのすけ よしかね)は、遊里祇園で遊び三昧の日々を送り、
仇討ちは絶対に無いと高師直側が油断したころ、高師直の屋敷への討ち入りを決行し、主君の仇をとる
<おかる・勘平の絡み>
おかるは塩冶判官の妻 顔世御前(かおよごぜん)の腰元
早野勘平重氏(はやの かんぺい しげうじ)は塩冶判官の武士
勘平が、おかると逢い引きを楽しんでいたときに、塩冶判官が高師直に切りつける事件が起こる
二人は駆け落ちをし、仇討ちに加わるべく軍資金を確保するが、強奪したものだと誤解され、切腹してしまう
後に、無実が判明し、息を引き取る直前に討ち入り血判状に判を押す
同志の義士は勘平の財布を形見にして仇討ちに向かう
<力弥・小浪の絡み>
大星力弥(おおぼしりきや)は大星由良之助の息子
小浪(こなみ)は塩冶判官が高師直を斬りつけるのを押しとどめた男の娘
二人は許婚(いいなずけ)で、一夜限りの夫婦生活を持ち、力弥は討ち入りの準備に出発する
<師直・顔世御前の絡み>
高師直は、塩冶判官の妻 顔世御前に横恋慕をするが振られる
このことが、塩冶判官が高師直に斬りつける直接の原因となっていく
全十一段におよぶ大長編歴史物
<大序>
別名:鶴ヶ岡社前の場・兜改めの場
<二段目>
異なる台本が2つある
・桃井館上使の場・桃井館松切りの場
・鎌倉建長寺書院の場
<三段目>
進物の場・文使いの場(足利館城外の場)
喧嘩場(足利館殿中松の間刃傷の場)
裏門合点(足利館裏門の場)
<四段目>
扇ヶ谷塩冶館の場
花献上・花籠の段
判官切腹
評定
城明け渡し(扇ヶ谷表門の場)
<五段目>
山崎街道の場
別名:濡れ合羽
鉄砲渡し
二つ玉
<六段目>
早野勘平住家の場・早野勘平腹切の場
別名:愁嘆場
<七段目>
祇園一力亭の場
別名:茶屋場
<八段目>
道行旅路の嫁入
<九段目>
山科閑居の場
<十段目>
天川屋見世の場
<十一段目>
師直屋敷討ち入りの場
高家討ち入りの場
柴部屋焼香の場
裏門引き上げの場
<芝居の独参湯>
「菅原伝授手習鑑」「義経千本桜」とならぶ人形浄瑠璃の三大傑作といわれる
上演すれば必ず大入り満員御礼となる演目として有名
劇場が不況だったり経営難に陥ったりしたときの特効薬とされていたといわれる
<大序(だいじょ)>
「時代物」の序段の冒頭部分のこと
現在、この「大序」の演出が伝わっているのは「仮名手本忠臣蔵」のみといわれる
幕開(まくあき)の前には口上人形(こうじょうにんぎょう)が登場し、独特のせりふ回しで配役を紹介する
「とーざいーとーざいー」と「東西声(とうざいごえ)」、ゆったりと打たれる「柝(き)」に合わせて、
「定式幕(じょうしきまく)」が徐々に開けられる
開幕時には、登場人物は人形のように顔を伏せており、「竹本(たけもと)」が役名を語ると少しずつ顔を挙げていく