香道(こうどう)は、東山文化時代に確立した日本の伝統的な日本三大芸道の一つ
作法のもとに香木を焚き、立ち上る香りを聞く(嗅ぐ)
香木の香りを聞き鑑賞する「聞香(もんこう)」と、香りを聞き分ける香遊びである「組香(くみこう)」の二つに大別される
香を焚くための聞香炉(ききこうろ)・聞香用灰・香炭団・火道具(火箸・灰押え・銀葉挟み)・銀葉(ぎんよう)・香木を用意する
香炭団を、コンロや電熱器で、全体に火が回るまで、よくおこす
聞香用灰を入れた聞香炉の中心に、火箸で穴を作り、香炭団をうずめる
香炉を手前に回しながら、火箸で灰を香炉の中心に向かってかき上げ、灰押えで軽く灰を押さえ、山の形に整える
一本の火箸で、山の頂点から香炭団まで、火気を通す火窓を作る
銀葉挟みで火窓の上に銀葉(雲母の板)を水平にのせる
数ミリ角に薄く切った香木を、銀葉の上(火窓の真上にあたる位置)にのせる
銀葉を灰の上で押すことにより、銀葉と炭団の位置を調節し、伝わる熱を調節して、香りの発散の度合いを決める
銀葉が火窓から外れないよう、香炉を水平に持って香りを聞く
聞香(もんこう)とは、香を一定の作法に則って香を聞くこと
数百年の歳月をかけて香りが熟成された香木と、香原料を調合することで様々な香りを作り出すことができる
晴れの日と湿気の多い日では香りの強さが異なり、湿気の多い日の方がより香りを強く感じられる
<志野流香道>
左手の上に聞香炉をおき、親指を縁に掛け、香炉を反時計回りにまわして灰の上に記される「聞き筋」を自分とは反対の側へ向け、
右手を筒のようにして香炉の上に覆い、その間に鼻を近づけて香を聞く
聞き筋は、灰の上に形作られるときに作られる一本太い筋で、この方向が香炉の正面になる
組香(くみこう)とは、あるルールに則ってゲーム性を楽しみながら、香を楽しむ方法の一つ
文学的なものや季節感を味わうものなど、いろいろなテーマでルールが定められている
その本質は香りを聞き、その趣向を味わうことであり、優劣を競うものではないとされる
<源氏香(げんじこう)>
源氏物語をテーマにした組香の一つ
享保年間(1716年〜1736年)のころに成立したといわれる
5種の香木を各5包ずつ、計25包が用意される
香元は、この25包を交ぜて、中から任意の5包を取り上げ一つを焚き、客に香炉を順に回して香を聞く
これを5回繰り返すことで、香炉が5回まわる
すべての香が終了したあと、客は5つの香りの異同を紙に記す
まず5本の縦線を書き、右から、同じ香りであったと思うものを横線でつないでいく
この5本の線を組み合わせてできる型は52通りあり、源氏物語54巻のうち桐壷と夢浮橋の巻を除いた52巻にあてはめる
客は、自分の書いた図と、対応関係を記した「源氏香の図」とを照合して、源氏物語の該当する巻名を書く
正解すると、解答紙に「玉(ぎょく)」と書かれる
<菖蒲香(あやめこう)>
夏に行われる組香の一つ
源平盛衰記 第16巻の「五月雨に 沼の石垣水こえて いづれかあやめ引きそわづらふ」をテーマとする
源頼政は、鳥羽上皇の女房の美人の菖蒲前(あやめのまえ)に一目ぼれをしてしまう
源頼政は、菖蒲前に手紙を何度も送るが、返事はもらえず、3年が経過して、そのことが鳥羽上皇に知れてしまう
鳥羽上皇は、菖蒲前に事情を聞くが、顔を赤らめるだけで、はっきりとした返事は得られなかった
そこで、源頼政を呼び出して、菖蒲前が大変美しいので慕っているのではないか試したいといい、
菖蒲前と年恰好、容貌がよく似ている娘に同じ着物を着せて、源頼政に菖蒲前を見分けるよう申し付けた
源頼政は、菖蒲前の顔をあまり見たことがなく、見分ける自信がなく、間違えれば大変なことになると躊躇し、鳥羽上皇に歌を奉じる
鳥羽上皇は、これに感心し、菖蒲前を源頼政に引き渡す
一番から五番の5種の香を用意する
菖蒲前にみたてる四番だけ焚き出され、香りを覚える
香元は、一番から五番を全て交ぜて、任意の順に焚き出す
客は、源頼政の前に並んだ女房たちにみたてた一、二、三、五の香は聞き捨てる
客は、聞き当てる四番(菖蒲前)がでたところで、記紙の右肩に「アヤメ」と記する
<菊合香(きくあわせこう)>
秋に行われる組香の一つ
「秋風のふき上げに立てる白菊は花かあらぬか波のよするか」(古今集和歌集、菅原道真)の歌をテーマとする
秋風の吹く、吹上の浜に立っている白菊は、花なのか、それとも波が寄せているのか見間違えるほどだ、という意味がある
秋風4包、白菊3包の2種類の香を用意する
秋風を焚き出して、香りを覚える
秋風3包、白菊3包を交ぜて、任意の2包を除き、残りの4包を焚き出す
客は、秋風か白菊かを記紙に記して提出する
香元は、客の回答が白菊が多ければ「菊」、同数なら「花」、秋風が多ければ「波」と記録紙に記す
<競馬香(くらべうまこう)>
よりゲーム性の強い組香の一つ
客は2つのチームに別れる
4種の香木を4包ずつ、合計16包用意し、4種を1包ずつ焚いて香りを覚える
残った12包から任意の2包を除いて10包とし、そこから任意のものを焚いて、試香の何番目と同じだったかを当てる
それおれのチームの客が正解した合計数がチームの得点となる
2頭の馬と騎手のコマが置かれた盤が用意される
騎手が乗馬するのに1点、騎乗したあとは1点ごとに4マス進める
1回でチームが0点だと落馬として、馬同士が5マス以上開くと遅れているほうを落馬とする
落馬から再度騎乗するのに1点を必要とする
先に、決められたマス(ゴール)を超えたチームのほうが勝ちとなる
香木は、主に3種類あり、数百年の歳月をかけて香りが熟成される
甘い香りがしたり、酸っぱい香りがしたりと、奥深い複層的な香りが楽しめる
香木の香質は、味覚にたとえて、辛(シン)・甘(カン)・酸(サン)・鹹(カン)(しおからい)・苦(ク)の5種類に分類される
<伽羅(きゃら)>
ジンチョウゲ科の常緑高木
ベトナムのごく一部の地域でしか採れない貴重な香木
樹木の内部に樹脂が蓄積し、数百年の間、土中に埋もれていたもので大変貴重なもの
<沈香(じんこう)>
ジンチョウゲ科の常緑高木
樹木の内部に樹脂が蓄積し、長い年月をかけて香りが形成され熟成される
<白檀(びゃくだん)>
ビャクダン科の熱帯性常緑樹
幹部の芯材を切り出してよく乾燥させて用いられる
一般的なお香の原料(薫香)には、香木のほか、薬や食用として使われている天然の漢薬香料がある
現在は、御家流と志野流の2つが主流となっている
<御家流(おいえりゅう)>
三条西実隆を流祖とし、室町時代から三条西家によって継承された
戦後、香道家 一色梨郷や山本霞月などにより、堂上御家流香道を継承していた三条西尭山が正式に近代御家流宗家として
推薦され、三条西家の当主が御家流家元を継承している
現宗家は、三条西尭水
<志野流(しのりゅう)>
室町時代の志野宗信を流祖とし、4代目から現在の蜂谷家により継承されている
現家元は、第20世 蜂谷幽光斎宗玄
<米川流(よねかわりゅう)>
東福門院に指南した米川常伯を祖とする志野流の分流
大名家に広く支持されてきたが、明治維新により、ほとんどが絶えてしまった