<用途>
日本画の重要な白い絵具
混色させて淡い色を作ったり、盛り上げなどや、最終的な発色を助ける下塗りなどにも用いられる
日本人形や能面、神社仏閣の壁画や天井画などにも用いられる
<貝殻>
白色度の高いものには、蛤(はまぐり)が用いられる
牡蠣(かき)、帆立(ほたて)の貝殻も加工がしやすく用いられる
<製法>
貝殻を天日にさらして、数ヶ月〜何十年かけて風化させる
さらした貝殻を粉砕し、水で溶き、粘土状になったものを板の上に延ばして更にさらす
<カラズリ>
乳鉢を使って、なるべく細かい粒子になるように擦る
<膠を加えて練る>
カラズリした胡粉に、少しずつ膠(ニカワ)を加えて練り、ひとかたまりになるようにまとめる
「耳たぶぐらい」といわれる堅さにする
練る作業が遅いと、作業中にも乾燥が進み、膠を多く必要となる
季節・乾燥・体温・練るスピードなどによって膠の必要な量が変わり、
膠の量や、練り終わるまでの時間などが発色・伸びに影響する
地塗用として作る胡粉の場合は、煮たばかりの新鮮な、濃度の濃いものを用意する
<団子状にする>
胡粉を一つの固まりになるように練り上げる
空気抜きを行いながら押したり、ひねったり、粘土を柔らかくするようにして、柔軟な団子状の塊にまとめる
<胡粉を叩き付ける>
一つの塊の胡粉を、うどんの生地づくりと同じように、何度も何度も勢いよく叩き付けたり、伸ばしたり練ったりする
膠と胡粉の粒子をなじませ、余分な水分を乾燥させ、胡粉粒子にしっかりと膠を着ける
狩野派では、「百叩き」と称される
<余分な膠分、アクを抜く>
叩き続けていると、団子の表面に膠分が浮いてくるので、団子を適量、別の皿に取り、貼付ける
胡粉の山が隠れる程度の水を加え、電熱器で熱を与えて、沸騰する直前に電熱器から下ろして湯を捨てる
しばらくすると、上部に上澄み、底には少々荒い沈殿した胡粉に分かれるので、
上澄みのみを仕上げで使う場合もある
<指の指紋で溶かす>
胡粉の状態、用途に応じて、膠を足したり、水を徐々に加えて指の指紋を使って撫でるようにゆっくりと溶かして、
クリーム状になれば完成
<萱尾神社>
本殿(京都市指定有形文化財)
全体に丹塗り、胡粉塗、極彩色が施されており、軸部は丹塗り、柱上部・蟇股などは極彩色、板壁・軒裏は胡粉塗がされている
<智積院>
大書院障壁画「桜楓図」25面(国宝)
「桜図」は、金と白を基調にし、2本の桜を中心に、全体的に胡粉で盛り上げた直径6cmほどの八重桜を蒔き散らされている
<浄瑠璃寺>
子安地蔵菩薩立像(重要文化財)
木造、定朝様、胡粉地に彩色されている、平安時代の作
<清水寺>
朝倉堂(重要文化財)
正面五間、側面三間、入母屋造、本瓦葺、全面白木造で、木口のみ胡粉が塗られている
<壬生寺>
本堂障壁画
絹地に色鮮やかな極楽と地獄が描かれている
マスキングによる白抜きの手描き友禅染めの手法に、胡粉やプラチナ、金泥を塗るなど、独自の手法で光沢が出されている
<忘筌席>
天井は、胡粉をすり込んで板の木目が浮き出た砂摺り天井によって、明るさを巧みに取り入れる細工がされている
<市松人形(京人形)>
桐塑や木でできた頭と手足に、胡粉を塗り、おがくずを詰め込んだ布でできた胴につなげた人形
<上羽絵惣>
1751年(皇紀2411)宝暦元年
初代 惣兵衛が、燈籠町において、胡粉業を創業
日本最古の日本画用絵具専門店といわれる
胡粉を使用したネイルを開発する
<胡粉ネイル>
鮮やかな色彩をもつ
刺激臭がなく、通気性に優れ、速乾性があり、軽い塗り感になる
水溶性なので、除光液ではなく、消毒用アルコールなどで落とすことができる
<胡粉石鹸>
胡粉の粒子が、とても綺麗な丸い形をしており、肌に優しいスクラブ効果が得られる