<北山杉>
さし木苗の養成時から15~40年後の伐採に至るまで、一貫した育林技術が確立されている
高度な「枝うち」という技法により、切り口と末口の太さの差が少ない均一な太さに仕上げられている
<北山丸太>
北山杉の皮をむき、加工してつくられる
数寄屋造建築や床柱など、木の肌の光沢や模様(絞り)を楽しむもので、意匠材(インテリア素材)としての機能をもった素材
自然感を室内空間にもたらす材料として様々な用途に用いられる
和風建築、現代建築にもよく調和する
構造材としては、製材品や一般丸太と比較して曲げ性能に優れている
北山杉から木肌の美しい美しい磨き丸太を生産するために伝統的な技法が用いられる
<一代限り高林仕立>
皆伐高林作業のことで、25〜40年生ぐらいで一斉に伐倒し、末口直径9〜16cmの床柱が生産される
<垂木台杉仕立>
「北山のシンボル」とも称される
一つの株から数十本、多いと百本以上の幹を育て、一つの株が一つの森のように育成していく方法
植林の回数を減らして、収穫のサイクルを早め、ち密な木材を作ることができるようになった
森林の狭さを補うために北山人が編み出した恒続的な造林方法
北山は、急な斜面で、植林や育林は大変困難なところで、苗木もとても貴重なものだったことから
京都北部の積雪地帯で伏条更新をする天然の杉の木をみて考案されたといわれる
伏条更新(ふくじょうこうしん): 下の枝が雪に埋もれ地面に接すると、その枝が根付いて成長していく
数奇屋建築用に用途を限定して造林される
第二次大戦後、防火建築法により垂木の需要が急減したため、台杉仕立は大幅に減少した
<枝打ち>
植林後6~7年後の4~7月以外の時期に最初の枝打ちが行われる
その後、4年毎に枝打ちが繰り返し行われる
下の枝から順次切り落とすことにより、幹の成長を止め、切り口と末口の太さの差を少なくする技法
北山丸太の特徴で、良質の北山丸太をつくるための特に重要で高度な作業とされる
成長期の4~7月以外の時期に、はしごを杉の幹に架けて枝まで登り、鋭利に砥いだ鎌か鉈(なた)で
枝の付け根を幹に沿って打ち落とし、打ち跡が幹より出ていないことが重要とされる
<北山磨丸太>
北山丸太の基本であり、材質が緻密で節がなく木肌はなめらかで光沢があり、通直で真円に近く元末の差が少ないのが特徴
<北山天然出絞丸太>
木肌に自然にコブ状・波状の凹凸(絞り)ができたもの
品種や地質、日当たりによって様々な表情が見られる
主に床柱として用いられる
<北山ちりめん絞丸太>
一般的な天然出絞はコブ状・波状に突出しているが、溝のような絞りが出る品種
非常に希少な品種
<北山面皮柱>
北山磨丸太を手斧(ちょうな)などで製材し、丸太の木肌を残しながら木目の美しさを引き出したもの
<北山人造絞丸太>
木肌に波状に出る天然絞りを人工的につけたもの
伐採の2~3年前に箸状の材料を幹に巻き付けて絞り模様がつけられる
一般的な床柱として用いられる
<北山タルキ>
垂木(タルキ)用材
無地が特徴で元末の差があまりない
茶室や数寄屋造住宅に用いられる
最近では、手すりやルーバーなどの装飾用としても用いられる
<洛北>
北山丸太の新しい用途として腰板・壁板用に開発されたもの
木肌と木目の両方に美しさを持ち、一般に店舗、住宅など幅広く用いられる
<穂摘み・挿し穂>
5月初め頃、選び抜いた優れた北山杉の品種の親木から穂木が穂摘みされる
穂摘みされた長さ30cmほどの穂木を苗床に挿木する
<植林>
挿し穂から2年後の3月頃
発根の良い苗が、山に植林される
<下草刈り>
北山杉の植林後6~7年間
毎年6~8月頃に、植林地の下草刈りが行われる
<枝打ち>
植林後6~7年後の4~7月以外の時期に最初の枝打ちが行われる
その後、4年毎に枝打ちが繰り返し行われる
下の枝から順次切り落とすことにより、幹の成長を止め、切り口と末口の太さの差を少なくする技法
北山丸太の特徴で、良質の北山丸太をつくるための特に重要で高度な作業とされる
成長期の4~7月以外の時期に、はしごを杉の幹に架けて枝まで登り、鋭利に砥いだ鎌か鉈(なた)で
枝の付け根を幹に沿って打ち落とし、打ち跡が幹より出ていないことが重要とされる
<絞巻(人造絞丸太の場合)>
伐採の2~3年前の4~7月以外の時期に行われる
生育中の幹に、2~3年の太りを利用して、プラスチック製の箸状の当て木を針金等で巻き付け、
当て木を食い込ませて、木肌に凸凹の絞り模様をつける
<枝締め>
伐採する前の年の11~3月頃、枝を適度に打ち落として太りを抑える
木肌が引き締まり、表面の干割れを抑え、色艶・光沢を良くする効果がある
<伐採>
植林から約30年後の9~11月頃
伐採後、約1ヶ月はそのままにして、葉枯らし乾燥が行われる
<皮剥ぎ・背割り>
搬出された丸太の樹皮を剥く
一方を芯まで丸のこで切れ目(背割り)を入れて、表面の干割れを防ぐ
<天日乾燥>
背割りを入れた丸太を、天日にさらして乾燥させる
表面の色が白くなったら、室内に取り込み、風の通るところでゆっくりと1~3週間ほど乾燥させる
<人工乾燥>
天日乾燥の後、機械による人工乾燥が行われる
<磨き作業>
乾燥させた北山丸太の表面を、さらに光沢を引き出すため、たわし状のもので磨く
かつては、菩提の滝で採取した砂を使って、女性たちが磨いていた
<完成>
北山杉の植林から約30年
北山丸太の生産地域によって「地山丸太」「丹波物」と区別されて称される
<地山丸太>
江戸時代から明治時代にかけての、北区中川を中心とした山林3,000haの地域と、
昭和時代初期に拡大した、小野郷・大森・高雄地区も含められる
合計面積5,000haの地域
そのうち95%が山林で、農業生産はごく一部に限られた純山村地域
全山林のうち、磨丸太類の林分は1/3ほどで、アカマツ林が半分、残りはヒノキ・スギ用材林
アカマツ林が多く、連年、山焼き(もやき)がされ再造林を繰り返して、
一般用材や薪炭材など多面的な林地利用が行われてきており、北山丸太の生産は貴重なものとなっている
<丹波物>
昭和時代後期以降に拡大した北桑田郡京北町、船井郡八木町、日吉町等から産出したもの
面積は約3万ha
もともとは一般用材林地域、薪炭林地域であった地域
磨丸太需要の急拡大に対応して、人工絞丸太原木の生産地として確立してきた
北山丸太を使った数寄屋造の代表的な建築
<桂離宮>
<修学院離宮>
<長岡天満宮>
<今日庵>
<角屋>
<菩提の滝>
菩提道(京道)沿い、中河(中川)から約2kmのところにある
僧侶が、頻繁に訪れていたといわれる
北山磨丸太を美しく磨くために、菩提の滝の滝壺にあるきめ細やかな砂が使われてきた
高僧が、旅の途中の中河村で病気になり行き倒れたとき村人に看病され、
「菩提の砂という、どこの土地にもない全く珍しい良い砂で、杉丸太を磨いて商ったら、この土地は必ず栄えるであろう」と
話したといわれる
それを聞いて、杉を磨いて磨丸太を製造するようになったといわれる
川端康成の小説を原作とした映画「古都」の撮影地にもなった