蒔絵(まきえ)

 蒔絵(まきえ)は、日本独自の伝統的な漆芸の技法の一つ

 漆器の表面に、漆で、絵や文字を描き、漆が乾かないうちに接着剤代わりにして
純金粉、銀粉などの金属粉を「蒔く」ことで定着させる技法

 漆を塗り重ねるほど色に深みが増し、金粉、銀粉が照り映える

 金属板を定着させる「平脱(へいだつ)」や、青貝(夜光貝の真珠質)を貼る「螺鈿(らでん)」とは異なる
 平脱や螺鈿は、中国が起源の技法である

 奈良時代にも、数点の作品が見られる
 平安時代には、貴族の間で流行する
 貴族の優美さと、武士の権力の象徴として栄える
 室町時代には、現在の技術が、ほぼ完成したといわれる

【主な技法】

 <平蒔絵(ひらまきえ)>
 色漆、生漆で絵柄を描いた後に、金や銀の細かい金属粉が蒔かれる
 乾燥させた後、漆を数回塗り重ね、固まったところに磨きをかけ光沢を出して仕上げる技法

 <研出平蒔絵(とぎだしひらまきえ)>
 呂色仕上(蝋色仕上)をした素材に金粉を蒔いたり絵柄をつけ、漆でその上を塗りつぶされる
 乾燥させた後、木炭で絵柄を研ぎ出す技法

 <高蒔絵(たかまきえ)>
 漆などを塗り重ねて、他の面よりも一段盛り上がらせて立体的な絵を描く技法

 <砥出高蒔絵(とぎだしまきえ)>
 高蒔絵と砥出蒔絵を合わせた技法
 「肉合蒔絵(ししあいまきえ)」とも称される
 漆や炭粉などで絵柄の部分を盛り上げ、その上に漆で絵柄をつけ金粉を蒔き、
その後に、全面に漆を塗りかぶせ、乾燥後に漆を研磨して下の蒔絵層を出す技法
 工程を何度か繰り返すことにより、立体感を持たせ重厚に仕上げる最も手間暇が掛けられる最高級の蒔絵技法

 <卵殻蒔絵蒔絵(らんかくまきえ)>
 、ウズラなどの卵の殻を接着する技法

【漆(うるし)】

 漆(うるし)は、九州から北海道中部にかけて、栽培されている落葉樹
 漆は、高い樹木で10m程、直径30〜40cm
 9月頃には、黄色味に紅葉する

 雄木と雌木があり、雄木の方が、樹液の出が多い
 湿気を吸収して固まる特性がある

 漆は、「筆で描く事のできる唯一の接着剤」といわれている
 通常の状態では乾きにくく、細かい作業や、時間の掛かる作業に適している

【高台寺蒔絵】

 <蒔絵の寺
 高台寺

 高台寺蒔絵は、平蒔絵で作られている
 黒漆の面に金粉を蒔いて文様を浮かび上がる様式で、黒と金の対比が美しく際立っている
 秋草文様が多く使われ、片身替や家紋を使った紋散らしのデザインが多く、
 絵梨地や針描などの技法が用いられている

 下記の高台寺蒔絵の調度品は、いずれも安土桃山時代のもので、桃山美術の粋といえるもの
 <楓桐菊蒔絵薬味壷(重要文化財)>
 <秋草蒔絵歌書箪笥(重要文化財)>
 <竹秋草蒔絵文庫(重要文化財)>
 <菊桐紋蒔絵楾>
 <菊桐紋蒔絵角盥>

 <高台寺 掌美術館
 豊臣秀吉ねねの肖像画の他、蒔絵の調度品など桃山時代の美術品が多数保存、展示されている

【主な蒔絵】

 <三十帖冊子・宝相華迦陵頻伽蒔絵塞冊子箱(ほうそうげかりょうびんがまきえそくさっしばこ)(国宝)>
 仁和寺
 空海が唐から請来した写経の小冊子30冊で一部に空海自筆を含むといわれる「三十帖冊子」が納められている
 箱は、朝廷から下賜されたもので、平安時代の漆工芸品として貴重なもの

 <宝相華蒔絵宝珠箱(ほうそうげ まきえほうじゅばこ)(国宝)>
 仁和寺
 如意宝珠が納められている
 平安時代前期の漆工芸品で、蒔絵の初期の遺品として貴重なもの

 <海賦蒔絵袈裟箱(かいぶまきえけさばこ)(国宝)>
 東寺
 平安初期の漆工芸品で、空海の袈裟(国宝)を収納するためのもの

 <硯箱>
 因幡薬師堂 平等寺
 小督局が愛用されていたといわれる紅葉の蒔絵の硯箱
 非公開

 <光悦蒔絵>
 江戸時代初期
 本阿弥光悦が、金蒔絵に金銀貝、青貝などを配した斬新な意匠を残し、
尾形光琳(おがたこうりん)などに大きな影響を与えた

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