「五番町夕霧楼(ごばんちょうゆうぎりろう)」は、水上勉の小説
五番町の遊廓を舞台に、家族を養うため丹後から出てきた少女と、幼馴染の学生僧との悲恋を描いている
金閣寺放火事件と水上勉の実体験が題材になっている
終戦直後の昭和25年ごろ
丹後の与謝半島の寒村 樽泊の木樵の娘 夕子は、貧しい父と肺病の母と、3人の妹のために
西陣の色町 五番町夕霧楼に自ら売られて遊女となる
西陣の織元である好色な老人 甚造の贔屓を得て、1年後には五番町で一、二を争う売れっ妓になっていた
夕子には、青年僧をしてる、同郷の幼馴染の恋人の正順がいた
正順は、信徒の浄財で豪遊する寺の高僧たちの姿を見て、修行に幻滅していた
夕子を妾にしようとする甚造は、正順が住み込みで修業している鳳閣寺の住職に、廓通いを密告する
その頃、夕子は、肺病を患い入院してしまう
ある日、住職と言い争った正順は、幻滅と怒りから寺に放火し逮捕され、後に留置場で自殺してしまう
新聞で事件を知った夕子は、病院を抜け出して故郷の与謝へ戻り、正順を追って自殺する
<五番町>
西陣・上七軒の近くにあった遊郭
江戸時代初期から発展し、1958年(皇紀2618)昭和33年3月15日、売春防止法施行により廃止された
<金閣寺放火事件>
1950年(皇紀2610)昭和25年7月2日未明
金閣寺の見習い僧侶であり大谷大学学生の林承賢により放火され、金閣寺が全焼した事件