宇治十帖(うじじゅうじょう)(Uji Jyujyou)
宇治十帖(うじじゅうじょう)は、源氏物語54帖のうち、宇治が舞台となった最後の10帖
ゆかりの古跡が、宇治橋を中心とした宇治川の両岸に10ヵ所作られている
地図情報
源氏物語第三部の後半
宇治十帖は、「その頃、世に数まへられ給わぬふる宮おはしけり」と書き始められる
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第四十五帖(宇治十帖一) 橋姫>
薫君(かおるのみき)の20歳から22歳
光源氏(ひかるげんじ)の異母弟の八宮(皇子)の俗聖ぶりを慕い、宇治の八宮のもとに仏道修行に通うようになった薫君
晩秋の月の下で琴と琵琶とを合奏する八宮の二人の姫君たちを垣間見て、気品高く優雅な姉 大君に心惹かれ、
「橋姫の心をくみて高瀬さす 棹(さお)のしづくに袖ぞぬれぬる」と詠んで大君に贈る
八宮の侍女 女房から、自分が光源氏の本当の子ではないと知らされ、驚きうちひしがれる
京に戻った薫君は、匂宮(におうのみや)に八宮の姫君たちの話を聞かせ、匂宮に姫君たちへの憧れを抱かせてしまう
<第四十六帖(宇治十帖二)
椎本>
薫君の23歳春から24歳夏
匂宮は、初瀬詣の帰りに、宇治で、京より迎えにきた薫君とともに宴を行い管弦を楽しむ
京へ帰った匂宮は、八宮からの手紙をきっかけに大君の妹 中君と手紙を取り交わすようになる
薫君も、ますます大君に心を惹かれていく
八宮は、薫君に二人の姫君たちの将来の面倒を頼み、山寺で寂しくその生涯を閉じる
<第四十七帖(宇治十帖三)
総角>
薫君の24歳秋から冬
八宮の一周忌の日に、薫君は大君に想いを告白するが、独身を通すつもりの大君は、妹 中君との結婚を勧める
薫君は、先に、匂宮と中君を結ばせてしまおうと、策をめぐらせて二人を結ばせる
しかし、匂宮の訪れが遅くなり、責任を感じた大君は悲嘆のあまり病の床に伏してしまう
薫君の献身的な看護に、大君は初めて心を開いていくが、薫君に抱かれて死んでしまう
<第四十八帖(宇治十帖四)
早蕨>
薫君の25歳春
父親と姉を続けて亡くし寂しい日々を送る中君に、薫君は、大君の亡き面影を偲ぶ
中君は、「この春はたれにか見せむ亡き人の かたみにつめる峰の早蕨」と返歌する
中君は、匂宮の二条院に迎えられ幸せな日々を送るが、薫君が二条院に中君を再々訪れるようになり、匂宮は嫉妬を感じるようになる
<第四十九帖(宇治十帖五)
宿木>
薫君の25歳春から26歳夏
薫君は、天皇から娘 二宮との結婚を望まれ、気が進まないままに承諾する
匂宮は、左大臣 夕霧の六君と結婚することになる
薫君は、中君へ想いを告白するが、匂宮の子を身ごもっていた中君は、大君に生き写しの異母妹 浮舟のことを話す
宇治を訪ねたときに、浮舟の姿を垣間見た薫君は、その姿に心を強く惹かれる
<第五十帖(宇治十帖六)
東屋>
薫君の26歳秋
八宮に仕えていた中将君と八宮の間とにできた浮舟には、財産を目的での求婚者がいたが、その縁談が破れ、中君のもとに身を寄せる
そこで、浮舟は匂宮に言い寄られ、驚いた母は、浮舟を三条の小家に移す
浮舟の様子を聞いた薫君は、浮舟を引き取って宇治に移し、浮舟を愛しく思いながらも大君の面影に涙する
<第五十一帖(宇治十帖七)
浮舟>
薫君の27歳春
匂宮は、浮舟のことが忘れられず行方を捜し、宇治で薫君にかくまわれていることをつきとめ、
闇の中で薫君を装い、浮舟と強引に契りを結ぶ
浮舟は、最初は驚くが、次第に匂宮の情熱に引き込まれていく
このことを知った薫君は、厳重な警備をして匂宮を浮舟に近付けなくする
浮舟は、穏やかで誠実な薫君と、情熱的な匂宮の間で悩み苦しみ、ついに死を決意して山荘を出る
<第五十二帖(宇治十帖八)
蜻蛉>
薫君の27歳
宇治の山荘では浮舟がいなくなり大騒ぎとなるが、女房たちは入水したものとして、消息が分からないまま、
世間体を繕うために遺骸がないまま葬儀が行われる
匂宮は、悲嘆の余り病床に伏してしまう
事情を知った薫君は、自らの恋の不運を嘆きながら、手厚く四十九日の法要を営んだ
六条院では、明石中宮が、光源氏や紫上のために、法華八講(ほっけはっこう)を催された
薫君は、京で華やかな日々を送るが、大君や浮舟との「つらかりける契りども」を思い続け悲嘆にくれ、
ある秋の夕暮れに、蜻蛉がはかなげに飛び交うのを見て、独り言を口ずさむ
「あると見て 手には取られず見れば又 ゆくへも知らず 消えし蜻蛉」
<第五十三帖(宇治十帖九)
手習>
薫君の27歳から28歳夏
比叡山横川の僧都が、初瀬詣(はつせもうで)の帰りに急病で倒れた母尼を看護するために宇治へやってきた
その夜、宇治院の裏手で、身を投げようと
宇治川をさまよい倒れていた浮舟を見つける
僧都の妹尼は、亡き娘の再来かと、介抱し、洛北小野の草案に連れ帰った
手厚い看護を受けて元気を取り戻した浮舟は、素性も明かさず、死に切れなかったことを悲しみ暮らした
秋になり、浮舟は、つれづれに手習い(心に浮かぶままに古歌などを記すこと)をする
「身を投げし 涙の川の早き瀬を しがらみかけて 誰かとどめし」
浮舟は、妹尼の亡き娘の婿に求婚されたことから、尼たちが初瀬詣の留守中、立ち寄った僧都に懇願して、剃髪して尼になり静かに暮らす
やがて、都に戻った僧都から浮舟のことが明石中宮に、そして薫君の耳に届く
<
第五十四帖(宇治十帖十) 夢浮橋>
薫君の28歳
横川の僧都に会って浮舟が生きていることを知った薫君は、浮舟の弟 小君に、想いを書いた手紙を持たせて小野の里へ遣わせる
浮舟は、懐かしい弟の姿を見て嬉しく思うが、人違いだと言って小君には会わず、手紙も受け取らなかった
戻ってきた小君から様子を聞いた薫君は、手紙を出さなければよかったと落胆し、
かつての自分のように誰かが浮舟をかくまっているのではないかと思い悩む
【その他】
<宇治十帖モニュメント>
宇治神社の前、朝霧橋東詰にある
古跡ではなく、宇治十帖の全体を象徴する匂宮と浮舟のモニュメント
薫君に連れられて宇治に移ってきた浮舟と、浮舟の居場所を探り出してきた匂宮が、
小舟で宇治川の橘の島へ渡ったという場面をモチーフとしている
【京都検定 第4回2級】
【京都検定 第7回2級】
【京都検定 第2回1級】
【京都検定 第8回1級】