舎利(しゃり)は、能の五番目物(切能)の演目・謡曲の一つ
泉涌寺を舞台に、拝観に訪れた旅僧の前で、仏舎利を奪うために現れた主人公(シテ)の里人が足疾鬼に化け、
それを韋駄天が追いかけ仏舎利を取り返す
出雲の国(島根県)美保の関の旅僧が、都を見物しようと上洛し、唐の国から渡って来たという十六羅漢や仏舎利を見ようと、
東山の泉涌寺にやって来る
お寺の僧の案内で、仏舎利を拝んで感激していると、お寺の近くに住むという里人がやって来て、一緒に舎利を拝む
里人が、仏舎利のありがたい由来を語っていると、突然、空が曇り、稲妻が光ると、里人の顔が鬼に変り、
「私はこの舎利を欲していた足疾鬼(そくしっき)の執心である」と言い、仏舎利を奪い、天井を蹴破って虚空に飛び去ってしまう
旅僧は、物音に驚いて駆けつけたお寺の僧から、釈迦入滅の時、足疾鬼という外道が、釈迦の歯を盗んで飛び去ったが、
毘沙門天の弟の足の速い韋駄天が取り返したという話を聞く
二人が韋駄天に祈るっていると、韋駄天が現れ、足疾鬼を天上界に追い上げ、さらに下界に追いつめ、仏舎利を取り返す
足疾鬼は、力も尽き果てて逃げ去る
<五番目物(切能)>
主に人間以外の鬼畜・天狗・ご神体などをシテとするものが多い演目
「切能(きりのう)」とも称され、1日の最後に演じられることが多い
<泉涌寺舎利殿>
仏殿の背後に建つ
月輪大師の弟子 湛海が、南宋慶元府の白蓮寺から請来したという仏牙舎利(釈尊の歯)が安置されている
能・謡曲にも登場する韋駄天立像が安置されている