神坂雪佳(かみさかせっか)は、明治時代・大正・昭和にかけて活躍した京都生まれの近代琳派の画家・図案家
たらしこみ技法などの琳派独特の技法や構図を生かした作品を多数描き、琳派の継承者として位置づけられる
工芸品のデザイン分野でも幅広く活躍し、日本における近代デザインの先駆者とされる
<工芸図案>
欧州留学から帰国したばかりの品川弥二郎(しながわやじろう)と面識をもつ機会があり、
西洋の装飾芸術と、それにおける図案の大切さを聞かされ、装飾芸術、図案の分野に関心を高める
2年後には、東京へ向かい、図案家 岸光景に師事し、工芸意匠図案を学ぶ
イギリスで開催されたグラスゴー国際博覧会の視察など、約半年、渡欧する
当時のヨーロッパではジャポニスムが流行し、日本美術の影響を受けたアール・ヌーボが流行しており、
日本の優れた装飾芸術を再認識する
日本でも、アール・ヌーボ風の曲線表現などを取り入れた作品が多く作られたが、
「アール・ヌーボは、吐き気がするほど嫌なもので、自分は参考にするつもりもない」と強く批判する
官営のデザイン事務所である京都市立工芸図案調整所が設立され、主任として従事
3年後には、京都市技師として京都で本格的に活動を行う
京都市立美術工芸学校(現在の京都市立芸術大学)の教師を務める
美術工芸団体「佳美会」を結成
染織、陶芸、漆芸などさまざまな分野の若手作家が参加
図案のデザインから制作、展示販売までのプロセスを一貫して行う総合デザイン事務所とした
雪佳の実弟 蒔絵師 神坂祐吉は、雪佳が図案した作品を多く作っている
<琳派>
アール・ヌーボは、西洋に大量にもたらされた日本美術に影響を受けて生まれたものであることを現地で感じ、
西洋に新しい美術を生み出すほどの力が日本にはあり、古典や琳派といった日本の美術をより深く学ぶことが不可欠と考える
琳派の特徴は、大和絵と称される伝統的な絵画をベースにした、デザイン性や装飾性豊かな表現にある
琳派の代表的な技法「たらしこみ技法」、デフォルメ、クローズアップ、トリミングを用いた大胆な構図を学び、
そこに西洋的な抽象表現やモダンな感覚を取り入れた近代的な琳派の作風を完成させる
琳派の祖 本阿弥光悦の200回忌に併せた茶会「光悦会」に発起人として参加、企画運営にも携わったり、
琳派に関する研究論文を執筆・発表したり、琳派の展覧会を主催するなど、琳派の普及活動も精力的に行なった
「光悦会」は、現在も、毎年11月、光悦寺にて開催されている
<四季草花図屏風(しきそうかず びょうぶ) 六曲一双>
琳派の代表的モチーフである草花に取り組み、過去の琳派の絵師たちの画業を受け継ごうとした代表的な作品
細見美術館蔵
<金魚玉図(きんぎょだまず)>
細見美術館蔵
夏の風物詩である軒先などに吊るす丸いガラス容器「金魚玉」の図案
琳派のたらしこみ技法などを用いて、ガラス鉢の中を泳ぐ金魚を真正面から描いたモダンでユニークな構図
正面からとらえた金魚のユニークな姿を簡略化しつつも、金泥のたらしこみによって立体的に描き出している
不特定多数の職人や工芸家へ向けたデザインカタログにもなっており、
実際に書き写したり拡大したり組み合わせたりして使ってもらうことを想定したもの
ほとんどの図案集が、一度に多数作れる木版刷になっている
<海路(うみぢ)>
1902年(皇紀2562)明治35年出版
ヨーロッパからの帰国後すぐに出版された、渡欧中に得たアイディアを図案としてまとめた図案集
波を思わせる抽象的なパターン文様がいくつも掲載されている
前書には「染織品だけでなく様々な工芸品にも応用して広く使って欲しい」との希望が記されている
<蝶千種(ちょうせんしゅ)>
モダンで可愛らしい蝶の模様を集めた図案集
<木版画集「百々世草(ももよぐさ)」全3巻>
より日本画的なテイストの図案集
版元 芸艸堂の出版